思い出宝箱

入学式は今日ですよ!
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 中学校に着くなり、私たちはあっと驚いた。

 引っ越してきた当初、中学校のまわりをぐるりと一周したのだが、シートに覆われててグランドしかわからなかったのだ。

 新校舎がキラキラとまぶしく、おしゃれな門が私たちを迎えてくれた。

 新築のにおいがまだ残る、ピカピカな廊下を歩きながらお母さんがこう言った。

 「さっきね、担任の先生から電話があったの。実は今日ね、入学式だったんだって」

 驚く私に、お母さんは「あはは」と笑っていた。



***



 4月9日が入学式。

 以前住んでいたところの中学校はそうだったので、私もお母さんも日本全国同じだと思い込んでいた。

 入学早々、お母さんといっしょに向かったのは校長室。

 呼び出しを食らったわけだから、私の心臓は今にでも破裂しそうなくらいドキドキとしていた。


 「前代未聞ですね。入学式に休んだのは聖さん一人だけで、適当に風邪だと言っておきましたから、心配はいりませんよ」と、とくに怒られることもなく、担任の先生から注意されたのは学校指定ではないブラウスと靴下だけだった。

 そのとき履いていたのは白のハイソックスで、ブラウスを注意されることはわかるが、この靴下のなにがいけないのかと聞くと、学校指定の靴下があるというのだ。

 その指定の靴下というのが、くるぶしが見える真っ白な靴下。

 お母さんが目を丸くして、「ま、待ってください! くるぶしですか? 足袋のような、そんな超ミニの靴下なんてどこで売ってるんですか?」と妹のこともあってか、キレ気味に先生に尋ねると、「普通のお店にはありません。制服の取り扱っているお店だけなんですよ」と先生が申し訳なさそうに答えた。

 更に、妹の小学校同様、登下校はヘルメット着用とのこと。

 そして、私はお母さんの思いつきで、とんだ一ヶ月を送ることとなる。




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