思い出宝箱
□思い出のオルゴール
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────今も手元にあれば、3歳の娘に見せてあげたいのに…と、残念に思います。
というのは、私が小学校卒業と同時に、住み慣れた地を離れることになり、荷物が多くなるからという理由で、母がすべてのオルゴールを近所の人に譲ってしまったのです。
それを知ったのは、新居に着いてからでした。
あまりにも荷物が少なく、驚いたことに食器さえもありませんでした。
本やオルゴール等のおもちゃを近所の人にあげるときに、食器もいっしょにあげてしまったというのです。
「食器なんてまた買えばいいじゃない」と、あっけらかんと答える母に、私たちは唖然としてしまいました。
母は物に執着しない、古くない物でさえも惜しみなく捨てられる、私とは正反対のタイプでした。
物心がつく前から、薄々と母の性格には感づいてはいましたが、まさか、叔父からもらった大切なオルゴールまであげてしまうなんて、夢にも思っていませんでしたので、あのときの驚きは衝撃的なものでした。
……忘れられない思い出の一つです。
【終】
2011.01.08