思い出宝箱

思い出のオルゴール
3ページ/3ページ




 ────今も手元にあれば、3歳の娘に見せてあげたいのに…と、残念に思います。


 というのは、私が小学校卒業と同時に、住み慣れた地を離れることになり、荷物が多くなるからという理由で、母がすべてのオルゴールを近所の人に譲ってしまったのです。

 それを知ったのは、新居に着いてからでした。

 あまりにも荷物が少なく、驚いたことに食器さえもありませんでした。

 本やオルゴール等のおもちゃを近所の人にあげるときに、食器もいっしょにあげてしまったというのです。


 「食器なんてまた買えばいいじゃない」と、あっけらかんと答える母に、私たちは唖然としてしまいました。

 母は物に執着しない、古くない物でさえも惜しみなく捨てられる、私とは正反対のタイプでした。

 物心がつく前から、薄々と母の性格には感づいてはいましたが、まさか、叔父からもらった大切なオルゴールまであげてしまうなんて、夢にも思っていませんでしたので、あのときの驚きは衝撃的なものでした。



 ……忘れられない思い出の一つです。



【終】

2011.01.08


前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ