for you

□ムーンストーン
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『むくろっさん』


「なんですかそのクロワッサンみたいな呼び方」


『お誕生日おめでとうございます』


「え、何で知って…」


『あれですよ、愛の力です』


「…は?」


『…嘘です。お嬢様方がきゃっきゃ言ってましたから』


「あぁ」


『プレゼント、何か希望はありますか?』


「え…くれるんですか?」


『100円以内で』


「安っ」


『嘘です』


「…」


『で、あるんですか?無いんですか?』


「急に言われると出てきませんねぇ」


『何も無いのならこの未処理の書類を』


「…君は祝う気があるんですか」


『ありますよ、ミカヅキモ程度に』


「それほとんど無いじゃないですか!」


『嘘です』


「…巡りますか?」


『やだなぁ嘘だって言ってるじゃないですか』


「クフフフフフフフフフフ」


『…分かりましたよ。はい、これ』


「え、」


『誕生日プレゼントです。リクエストは何も無いんでしょう?』


「…」


『返品は不可ですから』


要らなかったら誰かにあげて下さい、とそう言って彼女は行ってしまった。


あまりにも突然だったので、引き止めることが出来なかった。


渡された小さな箱の中にはムーンストーンのスト
ラップ。


「…クフフ」


彼女はこの石に秘められた言葉を知っているのだろうか?


…どちらにせよ、彼女から貰ったプレゼントであることに変わりは無い。


他の奴らにあげるなんて考えられない。


嬉しい、その気持ちでいっぱいな今年の誕生日。


ムーンストーンの石言葉は、「純粋な恋」



 

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