短編
□忘れ物
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淡いオレンジ色の光が差し込む、静かな教室。私は、日直担当の学級日誌を書くために、1人教室に残っていた。
日誌書くとか、ほんま面倒くさいんやけど。今日の感想とかなんやねん。
適当でええか。えっと...今日も忍足くんはヘタレ全開でした、と。
『なんやねんその感想』
「ひやああ!!」
突然背後から聞こえた声に思わず叫んでしまい、とっさに口を押さえる。
『びっくりしすぎやない?』
そう言って笑ったのは、クラスメートの白石蔵ノ介だった。
「なんで白石がここにいるんっ!?」
『んー。ちょっと忘れ物してん』
「へぇ、完璧な白石でも忘れ物するんやぁ。で、何忘れたん?」
『そのうちわかるで』「?」
そのうちわかるてなんやねん。
白石は最後にそう発してから、私の隣の席に座った。
そしてずっと動こうとしない。
「あのー白石。忘れ物取りに来たんやないの?」
『そうやで』
「じゃあなんで居座っとるん?」
『アカン?』
「別にアカンことないけど..」
『忘れ物な、まだ準備ができてへんみたいやねん』
「忘れ物は準備なんせんやろ」
何言ってんねん。頭逝ったんやろか。
「よっしゃ、日誌終わったー!」
『お、忘れ物も準備ができたみたいや』
「は、はい?」
『一緒に帰ろ』
ボクはキミの忘れ物。
2010.6.5