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□空白は長く、されど再会は近く
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しばらくの間は、日をおかずにたくさん人が来ていたみたいだけれど、それも時と共に徐々に減ってきて、一年が過ぎた今では数人の同じ気配を数週間おきに感じるくらいだ。
そういえば、皆たいてい短い時間でいなくなるけれど、一人長い間一兄の傍に留まる気配がある。
来る回数は少ないけれど、誰よりも長い時間そこにいる。
気になって一度一兄の部屋の中をこっそり覗いたことがあった。
あたしがドアを開けたことには気付いていたんだろうけど、その人は一兄の寝るベッドの縁にこしかけて、じっと一兄の顔を見ていた。
言葉をかけるでもなく。触れることもなく。
ただ黙って一兄の寝顔を見ていた。
ただ、黙って。
長い間そのままでいて、時間の経過を忘れた頃、その人は音も立てずに静かに立ち上がると、あたしの方を向いて頭を下げた。
驚いているあたしをそのままに、その人は壁をすり抜けて部屋から消えてしまう。
それきりあの人を見ていない。
一兄のところには来ているけれど、あたしが行くことをしなかった。
あの時間を邪魔したくなかったから。
(一兄に教えてあげたい……)
でも、そんなことをしても一兄が困るだけだ。
だって、一兄にあの人は見えない。
(あたしの分を少しでも一兄にあげられたらいいのに……)
せめて姿が見えるくらい。
(あたしは無力だ……)
無力に嘆く少女は知らない

(俺は無力だ……)
無力に耐える少年も知らない。


浦原商店

「それでは、お一人ずつここへ霊圧を込めていってください」


再びまみえる日が近いことを。


新章へと続く。


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