WJ

□空白は長く、されど再会は近く
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一兄が霊を見えなくなったことにはすぐに気付いた。
その代わり、あたしの方がより強く霊を感じられるようになったことにも気付いていた。
だから、夜な夜な一兄の部屋にいくつもの気配が入れ替わり立ち代りやってきているのにだって気付いていた。
普通の霊とは違う。自縛霊の類でもない。母さんの墓参りで会ったわけのわからない奴とも違う。
一兄が着ていた黒い着物と同じものを着ている、霊とは少し違う人ではない人たち。
悪い奴らじゃないのは感覚でわかるし、一兄に悪さをしているわけでもない。
何度か部屋の前で耳を澄ませていた事がある。
一様に似たようなことを言っていた。
「いつまでそうしてるんだ」とか。「さっさと目を覚ませ」とか。「お前がいないとつまらない」とか。「待っているぞ」とか。「感謝している」とか。
一兄とあの人たちの関係をあたしは知らない。
一兄があの人たちと何をしていたのかもあたしは知らない。
一兄とあの人たちの間に何があったのかもあたしは知らない。
わかることは、一兄があたしの知らないところで大切なものを護ってて、その結果が今の一兄の状態で、あの人たちの行動原理なんだってこと。


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