高山さん(あまつきとハイガクラ)

□鯖味噌定食ヨーグルト添え
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建築関係の高校を奨学金を借りて卒業。
尊敬していた棟梁に弟子入りして半年。
新しい現場で雑用しながら、たまに仕事らしい仕事をさせてもらって二ヶ月。
昼食にアパートからも現場からも近い店で一番安い鯖味噌定食(500円)を注文し始めて二週間。
なぜか飯と味噌汁とおかずとお茶が乗るだけのお盆の上に、今日は一つデザートの皿が追加されていた。
「すんません」
「ん?」
誰かの注文と間違っているのではないかと思い、脇を通った店のロゴも柄も入っていない、オレンジ一色のエプロンを着けた給仕の男を呼び止める。
「俺、これ頼んだ覚えねぇんだけど」
パイナップルと桃と蜜柑、三種類の果物の上に、ヨーグルトとイチゴジャムがかけられたデザート皿を指すと、男は「あぁ」と一つ頷き声を少し潜めて言った。
「サービス」
「は?」
力仕事を主にしているようなガテン系の男たちが多いざわついた店内では、潜めた声は本当に近くにいる二人にしか聞こえない。
「二週間も鯖味噌オンリーだから、サービス」
「なっ!」
完全に覚えられてる!
驚いて男の顔を見れば、人を喰った笑みを浮かべてこちらを見ている。
初めてまともに給仕の顔を見たが、随分と若い。自分と同じくらいに見える。店主の息子だろうか。
「身長足りてないみたいだしな。とりあえず乳製品。なんなら牛乳もつけるぞ?」
「〜〜〜〜っ余計なお世話だ!!」

この会話が始まり。
それから店の二階で一つ屋根の下、共同生活を始めるまでそれ程時間はかからなかった。






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