Unlimited time


□act:6 幻の歌
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背後から声が聞こえた。
振り向くとエメラルドが立っていた。恐らく今のやり取りを聞いていたのだろう。


「あたし、演奏士でもあるの。だから…」
「そしたら、誰が歌うんだ?…どうやって送るんだ?」

一人の人物が歌魔導士と演奏士、どちらもの資格を持っていたとしても、霊魂を送るにはそれでは送れない。
歌魔導士と演奏士が、別々でないといけないのだ。

それは鎮魂曲に限っての話だが。


「じゃあ!これから始まる戦争の時だけでも…。魔導士がたくさん集められてるんでしょ?だからそこにいる歌魔導士さんに歌ってもらったら……」
「……それ、誰かが死ぬって確信してるってこと?」


エメラルドはその言葉に打たれて身動いだ。
そして俯いて弱々しく言う。


「だって…もう後戻りできないよ。今更、止められない。」
「…………」

そうかもしれない。
今更、そう。


「……でも…勝てないとは限らない」


俯いていたカノンは顔を上げた。

「演奏魔法は弱体化魔法としても力を持ってる。それなら演奏者は一人より二人の方がいいでしょ?」


よりしっかりしたメロディーを奏でられるのもそう。
だけど一番は、願いや想いが二人分になるから。音楽は想いが伝わる。
演奏士、また歌魔導士はその想いに魔力が反応し、想いが伝わる、もしくは形になる。

鎮魂歌もそうだ。霊魂が天へ逝くように願ったり、こちらの世界に降りるよう願う。


「それに演奏士の力は鎮魂曲だけじゃないよ。人を、元気づける事だってできる。音楽は未知数だよ」
「………そうだね」

エメラルドの言うことは、少しも間違ってない。
今更止められないかもしれない事も、二人の方がいい事も、霊魂へ奏でるだけの曲じゃない事も。

「ごめん。私の事考えて言ってくれたことなのに、強く言ってしまって」
「いいの。あたしも、最初から止められるって信じてなくて、ごめんね」


そして二人はハッとして周りを見る。
店の中は自分達7人とエリン族の店員一人しかいなかったが、みんながこちらを見ていた。店員さんまでもがニッコリしながらこちらを見ていた。


「…そろそろ行こうぜ」

レンが笑って言えば、頷き返した。


希望を、見失いかけた。
だけどまだ可能性はある。

誰かが死なないために、死なせないために、
本当に止めなきゃと思った。


―――これから起こることも知らずに。





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