Unlimited time


□act:4 意味
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「『憩いの書庫 ヴィンチ』」


たどり着いた町の入り口にかかれた文字をゆっくり読むアリア。
レン達は町へと足を踏み入れた。

「みんな本読んでる…」


すれ違う人のほとんどが、本を読んでいたり、数冊の本を持っている。
喫茶店の中をガラス越しに見れば、本棚と、本を読む人達。全員が本読んでいるというわけでもないが…。


「小さな町だけど、大きな図書館と、宿と広場がたくさんあるらしいですよ」

ここは情報収集・休憩にはもってこいの場所である。


「ね、昼食どう?」

エメラルドが後ろで腕を組みながら言った。
時計を見るとちょうど昼だった。


「そうですね」
「うーん…わたしはいいや」
「俺もあんま腹減ってないな」
「私もいいかな」
「じゃあオレも」

カノン・アリア・レンは昼食はいいと言った。
7人は、昼食組の3人と情報収集組の4人にわかれた。





++++++++


「あなたは何しに来たんですか」


フライドポテトを口へ運びながらシオンは向かいに座るクレッドに訊いた。エメラルドは隣でプリンを食べている。

クレッドは先程から何も注文せずに、ただそこに座っている。幾ら時間が経とうと注文する気配はない。
クレッドは持参の飴玉の包み紙を取り、口に入れた。


「紅茶下さい」


やっと注文した。
だけど紅茶だけ。それ以外は何も頼もうとはせず、口の中で飴玉を転がしている。

クレッドはシオンを一瞥すると、何が可笑しかったのか、クスクスと笑って言った。


「さっきアリア君から頂きましてね。君も一つどうです?」
「いいです」
「そうですかー」


意味のわからない質問。何か勘違いしている?

「僕があなたを見ていたのはその飴が欲しいからと思ってます?」
「違うんですかー?」
「違います」


クスクスと笑うクレッド。
シオンは深く溜め息をついた。

「アハハ、冗談ですよ。なんで注文しないのか不思議なんでしょう?」
「はい」
「私はね、少食なんですよ」


だったら情報収集したらよかったんじゃ……。
あれ?情報収集?


「……もしかして情報収集は面倒だったんですか?」
「それもそうですねぇ」


ズラズラ並ぶ文字を見てると嫌になるんですよ、と言うクレッド。

シオンがまた溜め息をつけば、クレッドは何かを企むような表情でシオンの顔を覗き込んできた。


「…………本当は」


真面目な話だ、と察しがついた。


「いのちの聖水≠ノついて、訊きたいんですよ」


シオンは目を見開いた。咄嗟に身を乗り出す。

「知っているんですか!」
「どんな能力を持つものかくらいは」
「そう、ですか…」


それを聞いたシオンは、落ち着いてまた席にきちんと座り直す。


「あれは、寿命を長くする為のものです。君は、それが望みかい?」

俯きながら、シオンは首を振った。


「じゃあ、誰かを生き返らせたい…とか?」
「…………はい」

店員がやってきて、食べ終わったフライドポテトの皿とプリンの皿を持って行った。シオンはそれを見て一礼すると、呟いた。


「母さんを、生き返らせたくて」
「君の?」
「はい」


シオンは顔をあげて、静かに言い放った。



「母は、殺されました」



…――――『エヴァ』に。





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