Unlimited time
□act:3 一緒でも
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たどり着いたのは一件の飲食店。
中にいるほとんどは、旅の者か、仕事を終えた男達。ビールで「お疲れ」と乾杯し、豪快に飲んでいる。
レン達はひとつのテーブルを囲んで席についた。
まずは飲料を頼む。
「そういやお前の妹、歌魔導士目指してるんだって?」
どこからか男の声が聞こえた。後ろの男集団からのようだ。
アリアの野菜ジュースを飲む手が止まる。
「ああ…全く困ったもんだよ。歌手になるってんで俺がバカにしたら今度は魔導士だとさ」
「お前の事 余程見返してやりてぇんだな」
「まあな」
男はビールを飲んで、またひとつ注文した。
「歌魔法といえば…アイツはどこに行ったのかね」
「アイツ?」
「ほら、村人殺したっていう」
「ああ…ソラ、だったか?」
嫌でも耳に入る男達の声。頭の中でエコーするようで、レン達が楽しそうに話している声は耳には入らない。
気付けば、カノンとクレッドだけが笑っていなくて、険しい表情で。アリアのように後ろの男達の話を聞いているらしい。
「アイツ、歌魔法の他に、いろいろ使えて有名だったろ。みんなに称えられてさ」
「いつも顔は隠してたらしいが、まだ未成年の女の子だったって話じゃねぇか。いい子だと思ってたのによぉ」
「アイツはただの人殺しさ」
バン
大きな音で、店が静まり返る。
カノンが手をテーブルにたたき付けて立ち上がったのだ。
そして後ろを振り返り、男を睨む。
「ソラは人殺しなんかじゃない!」
カノンが声をあげると、男達は後ろに退いた。
それでもカノンは近づいていく。
「カノン、どうしたんだ」
「ソラは無実だったんだよ!!」
レンが止めようとするがカノンは声を荒げる。
「ソラは悪く―――」
「カノン」
カノンが何か言おうとすると、か細い声が隣から聞こえた。
見るとアリアが憂いをたたえた瞳でこちらを見ていた。潤んでいて、涙が溜まっているように見えた。
だけど、流れなかった。必死で堪えていたから。
「アリ……」
「ありがとう」
「………」
「ソラを、かばってくれて」
心から。
ソラを、わかってくれて。想ってくれて。
―――覚えていてくれて。
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