Unlimited time
□act:2 記憶の片隅に
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「ターナルだな」
魔物の名称だ。
レン達は武器を取り出して構える。
カノンが魔楽器と呼ばれる武器のバイオリンを弾きはじめた。
「コンフュ」
「こんふゅ?」
「混乱のことですよ」
混乱の曲。混乱すると、自分に攻撃したり、相手を回復したりする。
だが、
「効かない!」
「混乱無効ってわけですか」
クレッドは前に出て手を振り翳す。
「コメット!」
すると空中に隕石が現れ、ターナルに墜落する。
ターナルは苦しみの声を上げた。
レンは短剣で切り掛かる。堅いので、ダメージが小さくなってしまう。少しずつダメージは与えられているようだが、やはり弱い。
ターナルが自身を回復しようとしている。
クレッドは隣で魔法を唱えて、カノンは違う曲を演奏していた。
「(オレにも魔法があれば…)」
…――出来るわ
「!?」
…――貴方はもうその資格があるのよ?
「は?」
…――ほら、貴方が願えば
またあの少女の声。
自分には魔法が使えるという事だろうか。
「なら―――!」
強い風が吹いた。
クレッドとカノンは髪を抑える。
旋風の中、ひとり立つのはレン。
そして天に手を振り上げる。
するとレンの足下に黄色い光線で時計の模様が現れた。
旋風は上がっていき、レンの頭上に現れたのは少女。クリーム色のカールした髪が揺れ、光を放つ。
レン自身も驚いていた。
自分が呼び出したのだろうか。
「私は時≠フ精霊」
精霊?
じゃあ自分は精霊士だとでも言うのか。
「契約者は貴方。私に呼び掛けるのも貴方」
「そんな事言われたってオレは……!」
「どんなに抗おうと契約者は君ですよ。現に君は魔法を求めた」
クレッドが言った。何故か、冷たく刺々しい感じがして、反論できなかった。それにクレッドの言うことは事実だ。
「…どうしたらいいんだ?」
「時の精霊と言いましたね。なら仲間の時間を早くしたり、敵の動きを遅くできるのでは?きっと、精霊士の君なら思うだけで彼女に行き届くはずです」
レンは目を閉じた。
願いを。他に何か考えたくても、何も考えず、ただ。
それしかできなかったから。
すると風が吹いて、淡くピンクに光を放つ。それは敵への真っ直ぐな光線となり、敵の動きが鈍くなっていく。
それを見たクレッドはコメットで隕石を落とそうとする。カノンは演奏でターナルの防御力を低くする。
隕石が落ちると、ターナルは声を上げて力尽きた。ターナルは粒子化して消えていく。
淡いピンクの光を放ち、少女が消えようとする。
すると少女は消える間際、クレッドを見て、優しく微笑んだのである。
「・・・」
クレッドはその事に気付いていたのか、複雑な表情を浮かべた。
「メルト」
小さく、誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。