Unlimited time


□act:2 記憶の片隅に
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記憶の片隅に




アリアとシオンは森を進んでいた。道は無い。ただ、真っ直ぐに。
先程、クレッドのポケットにいつも入っているという小鳥“リリー”が一枚の紙を加えて飛んできた。


『目的地はグリッターのようです』


アリアの臭いでも嗅がせて、リリーに場所を突き止めらせたのだろう。

「レンくん達と会いたかったりする?」
「え?」
「さっき出会ったばかりなんでしょ?…グリッターに行くらしいんだけど…どうしたい?」
「…アリアさんは?」
「わたしはどっちでも」


どっちでもと言われると困ってしまう。
こういう時に相手の心の中が見えたらいいのにと思う。

「本当にどっちでもいいんだよ」


アリアの顔を見たら、本当に切実そうに言うので、どっちでもいいんだなと思った。

「どちらにしろ、ここから行けるのってグリッターだけなんですよね?そこまでの道がいろいろあるだけで」
「まあ…」
「じゃあ、グリッターでいいです」
「そっか」


アリアは笑って応えた。
本当にどちらでもよかったから、沈む事は無かった。
暫く黙ったまま歩いていると、シオンが訊いた。


「アリアさんは、あのクレッドさんって人と知り合いなんですか?」
「あ…うん。知り合いっていうか…一緒に旅とかしてて」
「昔…。どれくらい一緒に?」
「えっと……1年くらいかな」
「なんか、不思議な人ですよね」
「わたしも、わかったのはポケットのリリーの事と口調くらいだよ。何を仕出かすかわからないし、昔の事も話さないから」


あの人は解らない。いくら一緒にいても解らない。考えも、行動も。
さっきもわざと兵士のいる方へ背中を押して、レン達を連れてセイレーンから移転しろと言った。

こんなことになったのも、クレッドのシナリオ通り。


「それに…一緒にいると、たまに少し怖くなるよ」
「?」
「クレッドさんは、なんでもわかってるんだ。だから…見透かされてしまいそうで」


思いや考え、間違えも。

アリアは複雑な表情から困ったように笑って言った。

「しかも自分の事自己中だって言うくせに、意味の解らない言葉でちょっかいだしたりして…」


意味の解らない言葉。何となくしか解らなかった。
だけど、それに背中を押されてたんだ。


「自己中なのに、優しいんだよ」


独りぼっちだったわたしを拾ってくれた。声をかけてくれた。
泣いたわたしに『仕方ありませんね』と。


「やっぱり、わかんないなー」





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