Unlimited time
□act.8 Release
1ページ/10ページ
林の中に、せせらぎが聞こえてきた。
人が近付かないこの場所に、グロウは好奇心で近付いた。
古い白い塔が見えて、高さに見上げたら、太陽が眩しくて目を細めた。
この年は猛暑。虫の泣き声が朝から夜までずっと続いた。
生い茂る草を踏む音が、冒険しているような気持ちになる。
進んで行くと、水の流れる音に歌声が混ざっている事に気づいた。
気になったのでグロウは、歌声のする方へ歩いていく。バレないように、静かに。
徐々に大きくなる歌声に、綺麗だ、と感じた。透き通るような声で。
元々グロウは音楽というものが好きだった。
木と木の隙間に、縁に石が並んだ浅い川が見えた。その中で大きめの石に少女が座っていた。
白に細い黒の横縞のだぼっとした服に、短パンを履いた少女。
「え?」
グロウが近付いたせいで物音を聞き取った少女が勢いよく振り返り、視界にグロウを捉えると、恥ずかしそうに慌てて立ち上がる。
そして逃げ出そうとして足が滑る。
「あ!」
グロウは走って慌てて手を伸ばすが、もう手遅れだ。
少女は大きな音をたてて川に落ちた。水しぶきがグロウにもかかる。
グロウは川を覗く。
「だ、大丈夫?」
「…大丈夫」
小さく少女の声が聞こえた。
本人は大丈夫≠ニ言っているが、びしょ濡れだ。
「風邪ひくよ?」
手を差し出し、握られた手を引く。
5年前、ソラとグロウの出会い。
act.8
Release