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「出来の悪い兄と出来のいい弟か〜。そりゃ弟が王に向いてるに決まってるよな」



ぽーんぽーんと買ったりんごを投げて遊びながら歩くシャチさん



「そうか?おれは理由はどうであれ、第一王子が継ぐべきだと思う」



「え〜、良い奴が王様になった方が良い国になって良いにきまってんじゃねェか」



「少し、引っ掛かるんだその弟王子に・・・」



「はぁ?ただのいい奴だろ。
ベポとリオはどう思う?」



くるりと後ろを歩いていた私とベポの方を振り向くシャチさん



「んー、おれもシャチと同じ意見かな。やる気のある子が継いだ方が良いよ」



「だよなー、リオは?」



「私は・・・、中立。人の噂だけで会ったことのない彼等の事を決めるのはおかしいと思うから」



「お前らし、っ!?」



その時、どんと小さな物体がシャチさんの足に当たった



「おっ、悪い。大丈夫かガキ?」



黒フードのついたローブを着ている物体は何もいわずに立ち去ろうとする



その手をぱしりと私は掴んだ



「な、何をする!!」



「何をするじゃないでしょ。
ごめんなさい、って謝ってる人に対して無視なんてしちゃだめ。
それに君から当たったんだから君も謝るべきだよ」



ぺしりと軽くデコピンをすると、ふわりと被っていたフードが外れ少年の顔が出て来る



金の瞳に赤い髪・・・、とても綺麗な色をしていた



「あ、・・・えっと、ごめんなさい?」



呆けていた少年ははっと我に返り大人しく謝った



よく見ると上物の服をまとってるし、貴族の子供かな?



「お前は、見ない顔だが、・・・誰だ」



びくびくと震えながら聞いてくる少年


やばい、ビビらせちゃったかな・・・



「あー、まあ旅芸人かな・・・?」



「旅芸人!?・・・なら、なんか芸を見せろ!」



「なんだ、このガキ偉そうに・・・」



「まあまあシャチさん、子供だから大目に、ね?」



にしてもどうしよう・・・、芸なんて何も・・・



「あっ、じゃあ水ジャグリングするね!!」



傍にあった噴水から水を球状に幾つも丸めるとそれを指の上でぽいぽいと回した



「おぉ!!」



キラキラと輝く目を見せる少年に自然と笑みが零れる



「すごいな、お前は!!」



「ふふっ、ありがとう。ところで君は「探しましたぞ王子!!」へ?」



だだだっと足音をたててやってきた屈強な兵団、その中の一番偉そうな人が少年に声をかけた



って、え?王子様?



「ちっ、もう見つかったか。・・・おい女!!一緒にこい」



ぎゅっと握られる手



「なっ・・・!!」



途端に力が抜けた。


っ、この感覚・・・。竜の涙・・・?



「リオっ!!」


「大丈夫か!?」



へにゃりと膝を着く私に心配そうにかけよってくる3人、だが・・・



「おれは先に帰っている。後は任せたグース兵長!!」



その言葉に何十人もの兵が私とシャチさんたちの間を裂いた



どうにか現状を打破しようと、原因を作っている彼の手をよく見ると赤いオレンジ色の指輪がその小さな指にはまっていた



「その、指輪・・・」



「ああ、これか。これはおれの大切なものだ!だが、さっきの芸の礼だ。少しばかり身につけることを許してやる!!」



「え、いらな・・・、っう・・・」



小指に指輪をはめられ、いよいよ言いようもない倦怠感と熱が身体を蝕み始めた



いつもと違うのはその症状が重度のものであること・・・



「おい、大丈夫か女!!っ、誰か城まで運ぶのを手伝え・・・!」




霞れゆく景色の中で私が最後に聞いたのは、シャチさん達が戦いながらも私を必死に呼ぶ声だった・・・―――



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