アルビノガール

□9時間目
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おれがまだアメリカにいた幼いころ、おれは一人ぼっちだった




寂しい、



そう言ってもおれに振り向かず、家をつぐ兄ばかり両親は可愛がっていた




言語は分かっていても、録に愛情と言うものを感じたことのないおれが、他人に愛情をやることなんて出来るはずもなく、おれは友達なんて一人もいなかった



だからずっとおれは海を一人で眺めていた





そんなある日のことだった




彼女が現れたのは・・・





いつも夕方には海から去っていたのだがその日だけは夕方まで砂の城を作っていた



砂の城が完成に近づいた時だった




「わあすごいすごい!!立派なお城だね」



パジャマを着たおれと同じ年くらいの少女がそこにはいた



じろりと訝しげに見ても、辺りが暗くて彼女の容姿はよく見えなかった




「これ、あなたがつくったの?」



無邪気な声に、おれは渋々頷いた



すると少女はにっこりと笑って、すごい!!と興奮していた




「お前、もう夕方だぞ・・・。帰んなくていいのか」



「うん。って言うか夜しか私こうやってお外を自由に歩けないし」



夜しか自由に歩けない・・・?



「どういう意味だよ」



「・・・お外の空気は私の身体には悪いんだって。だから手術するまでは病室にいなきゃダメなんだって。


だけど私、お外好きだし海見たいから。いつも夜にこうやって抜けだしてたの」




悪戯っ子のように微笑む少女は、すとんとおれの隣に腰を下ろした



こいつ・・・。



「お前、おれが怖くねぇのか」



そう言うと彼女はきょとんとした



「怖い?・・・っぷ、あはははっ!!!面白いこと言うね!!」



あはははっと尚も笑う少女を無言で睨めば、ごめんごめんと軽く謝る



「なんでそんなこと言うのかしらないけど、君は普通だよ。私と同じ普通の子供だよ」



ほら、とぎゅっと手を握られた



びっくりして離そうとしたが少女は握っては離さなかった



「うん。あったかい。ね?一緒でしょ」



くすくすと笑う少女



一瞬、月の光に照らされた少女の髪がキラキラと乱反射した




それからというもの、おれは毎日彼女と同じ時間に会うのが日課になっていた













「ロー・・・、元気ないね」



いつも通り隣に座る少女はそう呟いた



彼女の言う通りその日おれはひどく落ち込んでいた




「・・・親父に言われた。おれはいらない子だって。


おれなんて生まれてこないほうがよかったんだ・・・」



そう、俯いた時だった



ぽたりと熱い液体がおれの手の上に落ちた



驚いて振り向けば、少女が俺を見て泣いていた




「なんで泣いてんだよ・・・」



泣きたいのはおれの方なのに



お前に痛みがあるはずないのに




「っ、だって・・・。ローが生まれて来ないほうがいいとか言うから・・・」




ねぇ、ローと続ける少女




「生まれて来ないほうがいい人なんてこの世にどこにもいないんだよ。子供はみんな誰かに愛され祝福されて生まれてくるんだってお母さんが言ってた」



「・・・おれを愛してくれる奴なんていねぇよ。両親は両方とも兄貴に執着してる。

学校でも友達なんて一人もいねぇ。作り方さえ知らねぇし・・・」



「なんで簡単に決め付けるの、愛してくれる人がいないって!!」



何をしても怒らない少女がこんなにも取り乱したのは初めてのことだった



「・・・ロー、誰にも愛されてないなんて言わないで。私、ローのことが好きだよ。それじゃあ、足りない?」



不意にぎゅうっと少女に抱きしめられ、彼女の体温に触れ、



・・・気がつけばおれは泣いていた




『ずっと側にいる』




それが名も知らない少女とおれがした、ただ一つの約束だった






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