Jewel Honey
□プロローグ
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はあっ
はあっ
はあっ・・・
走っても走っても奴に追いつかれる
少女は全身を傷に侵され血をだくだくと流していた
満身創痍と言った言葉があるが正にそれだろう
それでも少女は走った、自身の船が有る岸とは全く反対の岸を目指して
「逃げても無駄だってェー」
ゆったりとした口調で突如現れた男、少女はチッと舌打ちをして睨みつけた
「っ、ボルサリーノ・・・。」
「追いかけっこはもう止めよーよォ、お姫さん」
少女は自身の武器である少女の身の丈程もある大きな銛(モリ)のような武器を構え、
それに"水"を纏わせ、矛先を男に向けた
「しつこい男は嫌われるよ」
「おぉ、酷いねェ。仕方ないでしょォ、こっちも上からの命令でね」
人差し指を少女に向け閃光を走らせる男
少女は間一髪で致命傷を避けるが閃光は太股を掠り少女を更なる痛みへと導いた
痛みに顔を歪める少女を見て男はニタリと笑う
「っ、はぁっ・・・」
「勿体ないねェ。"貴重な血"をそんなに垂れ流してー・・・」
「っるさい!!誰の所為よ!!」
「しっかたないでしょ。君が大人しく帰って来ないなら強行手段しかないでしょォ。・・・安心しなさい、増血剤ならあるから」
「要らない!!・・・私は帰らない!!あんた達の所へなんて、絶対っ!!あんた達に連れていかれるくらいなら死んだ方が千倍マシ!!!」
「口だけは達者だよねェ。先ずはその減らず口、閉ざしてあげようか」
そして、男はまた閃光を走らせる
少女はモリを構えキンッと跳ね返すと水の壁を作り、動かない身体に"水"を纏わせ無理矢理動かし走り出した
・・・少女が辿り着いたのは、崖だった
少女は口角を上げて自嘲するかの様に笑った
そして・・・、
「私の勝ちよ、ボルサリーノ・・・」
そのまま、崖から飛び降りザブンと言う音と共に海へと身体を埋めた
反対側の岸から船が動くところを見守りながら、冷たく優しい海に包まれた少女は薄く笑った
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