桜は春風に舞う
□春風は花の香り
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長い回廊に二つの影。
コツコツコツ...
コツコツコツ...
ピタッ
ピタッ
「お前は不審者か。一体何がしたいんだ。」
「不審者ってねぇ酷いよ皇毅。さっきの査問会の女の子を肴に一緒にお酒飲もうと思っただけなのに。」
安樹がキュっと眉を寄せた。
「無理だ。私用がある。大体さっきの査問会なんぞ興味がなっかたから聞いてない。」
「えぇ〜もったいない。あの子の瞳 僕結構好きなのに。」
「...ともかく私は今から私用があるんだ。なにか話したいならそこら辺の樹に喋っていろ。」
己のそんな場面を想像し安樹はふきだした。
「クスクス..それは怖いよ皇毅。ついに凌安樹がおかしくなったって噂されちゃう。
まぁいいや。今日は花街に行くよ。じゃあね皇毅。」
安樹がいなくなるのを確認して皇毅は息をはき出した。
今からの用事は誰にも邪魔されたくないし 知られても困る。
特に安樹なんかに知られて興味でも持たれたら 迷惑この上ない。
御史台長官である自分は秘密が何万とあるが、この秘密だけはなんとしても守らなければならない。
そんなことを考えているうちに厩舎についた。
玲綺と自分はお互い当主であり一族唯一の生き残り。
第一蔭家はその存在自体あまり知られていないし、知っている者も生き残りなどいないと思っている。
まぁほかにも色々事情があるのだが、お互い一緒には暮らせないのだ。
だから週に4日自分が馬を駆って玲綺に逢いに行くのだ。
皇毅は馬を駆りながら 己の愛しい妻を思った。
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