捧げ物

□とある2−7の昼休み
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なんやろ、最近クラスの女子がやたらとうるさい。
何人かのグループに分かれてギャーギャー言い合っとるんや。
その時の女子の形相と言ったらもう、般若や、般若。



「アンタら頭おかしいんとちゃう!?」



「はぁ?おかしいんはそっちのほうや!」



あーもう、静かにしてくれへんかな。
昼休みくらい、静かに落ち着いて過ごしたいんやけど。
そう思ってパックのしるこを飲んどると、教室の扉が開いた。



「お邪魔するで、光!」



「おっ、財前居ったな」



教室に入ってきたんは、謙也さんと白石部長。
二人とも、弁当を片手に俺に歩み寄ってくる。
それと同時に、女子たちの視線が俺に集中する。
うわっ、勘弁してや、これだからイケメンと一緒に居んのは嫌やねん。



「ん?光顔色悪いで、どないしたん?」



俺の重々しいため息と恐怖で青くなっとるのに目ざとく反応したのは謙也さんやった。
原因はアンタらやっちゅー話や。
あっ、パクってもうた。



「なんでもあらへん――」



「どれ、熱でもあるんか?」



ため息混じりに言った俺の言葉を遮り、謙也さんは俺の額にコツンと自分の額を当てた。
うぁっ、顔近い……!
それになんや、謙也さんは目ぇ瞑っとって、まるでキス待ち、みたいな……って、何考えとんねん俺!



「け、謙也さん近い……!」



「んー、熱はあらへんな……」



言いながら、謙也さんの手が首に押し当てられる。
ああ、風邪の時は首も熱くなる言うてたっけ。
けど、こんな人前で触る必要あらへんやろ!?



おかげさまで女子がさっきからうるさい。
「ほらっ、あれを見てもまだ言うんか!?」みたいなことをキャーキャー騒ぎながら言うとる。



「ちょっ、謙也さん、もうええから……!」



「ん、せやな!熱も無さそうや!」



「ちゅーか謙也、熱があったら青くなるんやなくて赤くなるやろ」



「あっ……忘れとったわ」



堪忍な、と謝ってくる謙也さんを小突きながら、白石部長はイスに座る。
謙也さんも座るけど、無許可で座りおったでこの人ら。
そんなことはお構い無しに、白石部長が俺の弁当を見て顔をしかめた。



「財前、今日もあんパンにパックしるこなん?」



「はい、ちゅーか週3で菓子パンとパックしるこっすわ」



「はぁ……あかんで財前、バランス良く食わな」



バランス良く言うたかって、家で作る時間なんてあらへんし、ちゅーか作れへんし。
それを言うと、白石部長は弁当の包みを開けた。
見れば、弁当箱の上に一回り小さい弁当箱が乗っとる。
そして小さい弁当箱が、俺の前に置かれた。



「どうせそんなことやろ思うて、特別に作ってきたったで」



「え……白石部長の手作り、っすか?」



「せや。基本薄味やけど、ほんのり甘くしてあるから食えるんやない?」



試しに黄色に輝く玉子焼きを口に放り込む。
めっちゃ美味い……ヘタしたら、おかんのより美味い。
それは玉子焼きに限ったことやなく、ポテトサラダもデザートにあった善哉もや。
どれも美味い、あかん、癖になりそう。



「気に入ってくれたか?」



「はい、部長の弁当めっちゃ美味いっすわ」



そりゃ良かった、と笑う白石部長に、俺も小さく笑い返す。
すると、また女子がうるさく騒ぎ始めた。



「今ん見た!?あれは認めざるを得んやろ!」



「いーや、認めへん!何が何でも譲れへんのや!」



「部長×従順気味ツンデレ、これは最高の萌えやろ!」



「何言うてん、ヘタレ×ツンデレは王道一本道やないけ!」



ヒートアップする女子の口論に圧倒されて、思わず押し黙る。
謙也さんも白石部長も俺と同じみたいで、女子を見つめとる。
そんな視線に気付いたんか、輪の中におった女子二人がこっちにずかずかと近付いてきた。
俺の机にバンッと手を叩きつけ、その衝撃でパックしるこが倒れた。



「財前君!」



「な、なんや……?」



あかん、女子二人めっちゃ怖い。
目ぇ据わってもうてるやん、俺なんかした?



「どっちが本命なん!?」



………
……………
……………………は?



「白石先輩と忍足先輩、どっちが財前君の本命なん!?」



いやいやいや、おかしない?
白石部長か、謙也さん?
なんやねんそれ。
男同士やないか、ホモやないか。



「白石先輩やろ!?大人の色香を漂わせ、部活でも憧れの人に惚れへんワケないやん!蔵光や!」



「いーや、忍足先輩や!ヘタレやけど攻める時は攻める、そのギャップにやられてまうに決まっとるやん!やっぱ謙光や!」



さっきから、別の国の言葉で喋られとるみたいや。
くらひか……?けんひか……?
なんやねんそれ、ワケ分からん。
白石部長は「あー…」て頷いとるし、謙也さんは顔少し赤くして「ヘタレやないし…」と呟いとる。



「さぁ、どっちなんや!?」



「いやいやいや、どっちって言われても……」



「ほな簡単に聞くで、付き合いたいんはどっちや!?」



どうなん!?と顔をグッと近づけてくる女子二人、止めてやマジで怖いねん。
俺はそんな般若面を直視することができへんくて、一番平和的かつまともだと自分では思える返答をした。



「別に、俺どっちも好きやし……」



沈黙。



あれ、あかんかった?
やって、どっちか、なんて選べへんやん。
どっちもええ先輩やし、俺、どっちも好きやし。
そんな意味を込めての返答やったんやけど、女子二人とその他の女子はおろか、謙也さんと白石部長まで、ぽかんと口を開けて俺を凝視しとる。
な、なんやねん、別に変なこと言うてへんやないか。



すると、女子の一人が「もしかして、禁断の三角関係……!」と思いついたようにこぼした。
瞬間、女子は興奮気味にぎゃいのぎゃいの話し出した。



「三角関係って、美味しすぎるやろ!」



「ほな、謙→光←蔵の謙VS蔵!?なんやねんそれ、最高や!」



「誰か、ネタ!ネタ帳にメモっといて、夏コミの新刊のネタ、それに決まりや!」



さ、三角関係?
ネタ?ネタ帳、メモ、な、夏コミ?新刊?
ワケ分からへん単語が飛び交う中、俺は部長手作りの善哉をおかわりしとった。









「なんや、光のクラスの女子もウチのクラスの女子と変わらへんなぁ……」



「ホンマやで、どこに行っても蔵光、謙光、果てにはユウ光やら金光やら……」



「まぁ、ええんやけど」



「俺は財前を譲る気はあらへんからな、謙也!」



「望む所やないけ、勝負や白石!」



……なんや、勝手に盛り上がっとるけど何の話かサッパリ分からへん。
次の授業なんやったっけ……。



次の日から白石部長と謙也さんから猛アプローチが始まるとは知らず、のん気にそんなことを考えとった。




(光、おはよう!一緒に学校行かへん?)
(残念、財前は俺と学校に行くんや)
(そんなんどうでもええっすわ、三人で行きましょ)
(きゃああああ、三角関係マジ最高やあああ!)



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はい、腐女子の言葉は全てわたしの心の叫びです(キリッ
キリリク、めっちゃ楽しく書けました……!
楽しく書けた、なのにギャグっぽくなってない気が……マジですみませんスライディング土下座(ズザァァァッ
何分、意識して書くとギャグじゃなくなる、けど意識してないといつの間にかギャグになってる、なんなんだろうわたし……(/_;)

キリリク、ありがとうございました!
また足運んでくださいねー!

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