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□ゆーあー☆まい☆らばー
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「お、俺と付き合ってや、光!
 男同士とか関係なく、傍におり、たい……」



少し顔を赤くして、たどたどしく、想いを伝えてくれた。
最後のほうは聞こえんかったけど、謙也さんは俺に精一杯気持ちを伝えてくれた。
まぁ、素直になるのが苦手な俺は、笑うしかできへんかったけど。



でも、ずっと前から好きやった。
俺と全然違ってて、だからこそ惹かれた。
まさか、向こうから告白してくれるとは思わんかったけど。



恋人同士になった俺たち。
そうや、恋人同士なはずや。



なのに!
恋人同士になった、それなのに!
あのヘタレは手の一つも出してこぉへん!
今日で付き合い始めて二週間になるんやけど、やっぱり何もしてこぉへんのや!



なぁ、どう思う?
フツーなら、付き合ってすぐに手とか繋ぐんとちゃうの?
そんで、部屋で二人っきりとかになったら、その、ちゅーとかするんとちゃうの?



手も繋がへん、キスもせぇへん、その先も、もちろんせぇへん!
なんやねんアンタは、俺に告って放っといて何がしたいねん!



最初こそ強気やったものの、だんだん不安が募っていって、マイナスのほうばかり考えてまう。
……やっぱ、謙也さんって女子の方が好きなんかな。
やって、俺はどっからどう見ても男やし、家庭的でもないし、素直にもなれへんし。



自室のベッドの上でごろんと寝返りを打って、時計を見る。
本来なら、俺は学校の教室で大嫌いな古典の授業を受けとったはずや。
でも、俺はサボっとるからただごろごろしたりパソコンかケータイいじっとるだけ。



やって、学校行けば謙也さんに会うんやもん。
会えば嫌な想像ばっかしてもうて、苦しいんやもん。



さっきから何度も何度もケータイが光って、メールの差出人を見れば【謙也さん】。
ふん、今更なんやねん!
手も繋いでこないくせに、こういう時だけ構ってくんなや!



ケータイを柔らかいクッションにぶん投げて、ふて寝する。
いや、ホントは寝すぎててもう眠くないはずなんやけどな。
なんやろ、いつの間にか寝てもうてた。














眩しいオレンジ色のヒカリが差し込んできて、目が覚めた。
窓の外を見れば、夕日が町の向こうに沈みかけとる。
あかん、ずいぶん寝てもうたな。
ブログの更新できへんかった……。



そんなことを思いながら体を起こそうとしたんやけど、あれ、起きれへん。
腹に力入れて何回も起きようとするんやけど、あれ、何でや?



「んー、光……」



……このアホみたいに間延びしてデレデレしとる声は。
なんとか首を動かして一つ寝返りを打てば、寝とる謙也さんと正面から向き合う形になった。



なんで謙也さんが俺の部屋のベッドで一緒に寝とんのや!
あれ、なんで?
俺、今日学校サボって、謙也さんからもメール全部無視して……あ、きっとそれや。
でも、その原因はアンタやろ、謙也さん。



そう思うとよだれ垂らしながら寝とるこの人が憎たらしく思えて。
俺の腹をホールドしとった腕を無理やり解いて、ベッドの下に突き落としてやった。
ごつっ!といい音、そして謙也さんの声。
「ぎゃあっ!」やないわ、ヘタレが。



「痛たた……あれ、光起きたん?」



「ふんっ」



「えっ、光?」



ぶつけた所をさすりながら謙也さんは俺に話しかけてくるけど、そっぽ向いて謙也さんを視界からはじき出す。
そんでそのまま枕に突っ伏せば、視界は真っ暗。
なんやねん、今更!
何も手ぇ出してこぉへんくせに、なんやねん!



「えっと……光、どないしたん?」



「うっさいっすわヘタレ」



「へ…!あのなぁ、俺は心配して来たんやぞ!?
 メールの返信も無し、玄関の鍵は開けっ放し!それなんに言う言葉はそれかいっ!」



ああ、うるさい。
ああ、ムカつく。
謙也さんはそのままぎゃんぎゃん騒いどって、いい加減俺もキレた。
枕の近くに置いとった熊のぬいぐるみを一つ手にとって、謙也さんの声のほうに投げる。



「ぶほっ、」



「なんやねんアンタは!心配?ふざけんなや!
 俺の気も知らんくせにごちゃごちゃ喚くなっちゅーねん!」



枕から顔を離して謙也さんを睨む。
そして、手当たり次第に謙也さんに物を投げつけた。
枕、ぬいぐるみ、布団、時計、ケータイ……は、あかんな。
けど、ケータイ以外は投げつけれるもん全部投げつけた。



「ちょっ、ちょお光危ない!あかん、時計はさすがにあかっ、あだっ!」



「うっさい!うっさいうっさいうっさい!!」



ついに本を投げようとした俺の手首を、謙也さんが掴む。
一瞬ひるんでもうたけど、すかさず謙也さんを睨む。
……あれ、前がぼやけて見えへん……頬があったかい。
俺、もしかして泣いとる?
やって、目の前におるはずの謙也さんが見えへんもん。



「……光、泣かんで」



「…っ、うっさい、すわ……泣いて、へんし…」



「いやいやいや、どう見ても泣いてるがな」



謙也さんが指で涙を拭う。
あっ、やっぱ泣いとるんか、俺。



「……どないしたん?俺、なんかしたか?」



「……っ!!」



なんも知らないからそんなこと言えんねん!
俺はアンタがヘタレなせいで泣いてんねんぞ!?
もうええ、もう知らん……!



「謙也さん、俺のこと嫌い?」



「そんなワケあらへんやろ!」



「なら、なんで手ぇ繋がへんの?なんでキスせぇへんの?」



「えっ、ちょ、光!?」



ベッドから降りて、謙也さんの膝の上に座る。
なんでそうしたんか分からんけど、多分、謙也さんが逃げそうやったから。



「なんで、なんもしてくれへんのですか……?
 俺だけ謙也さんのこと好きみたいで、こんなん嫌やぁ……」



「…………」



「そっすよね……男同士やし、ブアイソやし優しくあらへんし、俺やっぱからかわれとるだけ」



「光!!」



いきなり謙也さんが大きな声で俺を呼んで、両手で俺の肩を掴む。
びっくりした……。



「俺な、光のことめっちゃ好きや。
 男同士?ブアイソ?光やったら関係あらへん。
 どんな光でも、俺は光のことが好きなんや」



「せ、せやったら、なんでなんもせぇへんのですか…?」



「やって光から返事聞いてへんもん」



「…………は?」



へ、返事?
返事って、なんの返事やねん。



「俺が光に告った後、光顔真っ赤にして俺のこと笑うて、そのまま帰ってもうたやん。
 ……えっ、まさか覚えてへんのか?」



はぁ?
なに言うてんねん、この人は。
この期に及んでしらばっくれるとか、マジでないわ。



……え、マジで?
俺、返事したよな?
告白されて、笑うて…………
…………
………
…!!!



「思い出した?」



「〜〜〜っ、はい……」



「よかった。……まだ恋人やあらへんのに、手ぇ出せるワケないやろ?」



謙也さんはホッとしたように笑う。
けど、俺は恥ずかしくて恥ずかしくて、さっきのようにそっぽ向いた。



せやった……俺、謙也さんの告白が嬉しすぎて逃げたんや。
ああああもう、タイムマシンあったらあの日の俺にドロップキックかましてやりたいわ!



「……光、改めて聞くで?」



「は、はい……」



「……俺と付き合ってや、光。
 男同士とか関係なく、傍におりたい」



俺は泣きながら何度も何度も頷いた。
声にはならへんかったけど、好きという気持ちをたくさん込めて。
謙也さんが額にキスしてくれたのが、めっちゃ嬉しかった。



「じゃあ謙也さん、明日から手ぇ繋いでくださいよ?」



「おん、任せとけっちゅー話や!」



あんだけ手ぇ出してこんかった謙也さんに抱きしめられて、俺も抱きしめ返した。
……おかんが帰ってきたときは、さすがに離れたけどな。





――――――――――――――――――――
以上、拗ねちゃう光クンでした★
……拗ねてる、かな。
難しいなぁ、私が書く光って泣くか嫉妬するかデレデレだから(笑)
いい経験になったんじゃないかな!


エイト様、書き直しはいつでも受け付けますよー!

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