復活 短編集

□意地悪な王子様
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「まってよー!!!ベルー!!!」

ちょうどお昼時。
とある小学校の廊下では追いかけっこが行われています。
追いかけっこと言っても遊びではありません。ある種のイジメです。

「ししっ!俺は王子だから命令なんか聞かなくても良いんだよ」

金髪の前髪で隠された顔に、頭には王冠を飾っている独特な少年、ベルは何かお弁当箱を持って余裕に走っています。
そんな彼の少し後を死に物狂いでベルを追いかけている大きな瞳と彼方此方に飛び跳ねた蜂蜜色の髪が特徴的な少年、沢田綱吉、通称ツナ・・・

そう今まさに追いかけっこの中心はこの二人なのです。
というのも始まりは数分前





「ししっ!姫の弁当って懐かしい感じがするよね」

机に座ってお昼の弁当を一人でチビチビ食べていた綱吉の背後からベルが覗き込むようにして言いました。
それに対し綱吉は馬鹿にされたと思い

「・・・お母さんの料理は古くないもん。世界一美味しいもん」

とちょっと冷たく言ってしまいました。
ベルは本当は『懐かしくて美味しそう』という意味で言ったのですが説明が足りなかったのか『懐かしい=古い』、に結びついてしまったのです。
しかし、好きな子から冷たくされては良い気持ちにはなれません。
つい気を引きたくて綱吉の隙をつき弁当を弁当箱ごと奪うと教室を出ていきました。
そして綱吉が取られたそれを取り返そうとしてベルを追いかけたら今の状況が完成したのです。

「ハァ、ハァ・・・ケホッ・・・・」

人通りの少ない廊下で綱吉は俯き徐に立ち止まりました。
ベルはその人並み外れた身体能力でもう近くに居ません。
訳のわかんない感情で大きな瞳にキラキラ溜まっていく涙、頬っぺたは必死に走って真っ赤に蒸気しています。
お腹もすいて、体力消耗、おまけに大好きなお母さんの料理を批難されて・・・・。
なきたくなるのも当然です。

「うぅ・・・帰りたいよぉ・・・」

そう一言呟いてしまえば今まで支えていた何かがいとも簡単に崩れてしまい、後から後から涙は止まりません。

「ぐすっ・・・うぇ・・・おか、さ・・・」
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