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□プロローグ
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青々とした緑、川のせせらぎ、葉っぱの掠れ合う音。この世界には自然で溢れていた。
しかし人間が登場したことでその秩序は乱され、大量の緑が死んだ。山が死んだ。川が死んだ。この暴挙を許すことが果たしてできようか?否出来ない。
物事には何でも終わりがあるように、はじまりも存在する。まるで空に雲が立ち込め、枯れた大地に水を潤すように・・・。





「雨だ」

少年は呟く。その小さな頭や顔にぽつりぽつりと雨が当たる。
それを意に返さないかのように、少年は空を見上げた。

空はさっきまでの晴天と比べ物にならないぐらい真っ黒な雲に覆われ、光は微塵も漏れていなかった。まるで最初から空なんてものがなかったように、底抜けの黒だった。
少年はそこに少しでも光が漏れていないかと探すように目を凝らしたが、やはり光が漏れることは無かった。いつまで待っても光が現れることはないだろうと悟り、顔を正面に戻し、辺りに目をやる。

遥か遠くにはこの辺りを1周するように、漆黒のゴツゴツした岩肌が一列に連なっていた。
地面はまるで何日も雨が降っていない砂漠の様に干からび、ひび割れが無数に広がっていた。
目線を手前に動かす程、岩の数もひび割れの数も減り形も小さくなっていた。

そして自分の足元まで視線を戻した時、小さな花が咲いているのに気づいた。
ひっそりと足に寄り添って咲くそれは、まるでじゃれつく子犬の様。
だがそれは花と言える代物ではなかった。花弁が一枚もくっついていない剥き出しの花だったのだ。

「・・・」

少年はその花とも呼べない代物を見つめながら、動かなかった。
一瞬躊躇をしたが、少年はしゃがみこみそっと花の根元を手折り、掌に乗せた。
そして再びじっと見つめながら数分・・・いや、30分、1時間だったかもしれない、時間が経った。

それまで微動だにしなかった少年が、花の上に空いている手を重ねるように置き、静かに目を閉じた。
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