保健室の死神

□隣が気になって眠れない
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その日、朝から藤にとってなによりも大嫌いな音楽の歌のテストがあった。
歌のテストであるため人前に出て歌わなければならない。
唯でさえ音痴であるのに何故人前で歌わなければならないのだ、と藤は潔くテストをボイコットした。
無論、テストは後日行われるであろうが、とにかく人前で歌わなければそれで良い。


(天気も悪ぃし、保健室でも行って寝るか)


ぼんやりとそう思いながら藤は保健室へと向かっていった。
















******




保健室に辿り着いてみると丁度あの養護教諭は不在であった。
鍵は意外にもかかっていなかったため、恐らくちょっと席を外しているだけなのだろう。
これ幸いと厄介なのが戻ってくる前にさっさと中に入り、カーテンを締め切って藤はベッドに潜り込んだ。


「……ねみ」


小さく呟くと同時に深い眠りへと着いた。
どこにでもすぐ寝られる藤の特技である。



どのくらい寝たのだろう。
1時間?いや30分かもしれない。いやいやもしかしたら15分かも?
そのくらいの睡眠で突然藤は目が覚めたのだ。
カーテン越しから聞こえる、誰かの会話によって。




『……から、それは…………で』
『でもっ!……は、………だと言って……』


藤がいることに気付いていないのか、深刻そうに話し込んでいる。
声からしてどちらも生徒ではない。
成熟した低い男の声と、鈴のような心地よさをもつ女の声。
そのうちの男の声に、藤は聞き覚えがあった。



(…………センセー?)


案の定、よぉく耳を澄ませてみるとあの養護教諭・派出須逸人の声で。
女の方は聞き覚えがなく、初めて聞く声であったが眠くて仕方ない藤にはどうでも良かった。
きっと苦情を言いに来た熱心(厄介)なPTAだろう。
日頃から何かある度にあの風貌で“出張所保健室”をやって徘徊しているから、PTAの堪忍袋でも切れたのだろう、と藤は思った。
これに懲りて少しは自重してくれると良い。

くぁっと欠伸を1つ溢してもう一度眠りにつこうとしたとき。



事件は起きた。(藤の中で)








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