僕は、きっと君をアイシテル 番外編


『君という名の不思議な空間』




「ねぇ、翔太!」

隣に座る彼の聴覚を遮っているのは、
耳全体を覆うようなヘッドフォン。
いつもの翔太らしいクールな表情は、
今現在手元の雑誌に落とされている。

(此処に!彼女が隣にいるんだけど!)

そう伝えたいけど少し躊躇してしまう。
だって、
私はそんな彼の横顔も好きなんだ。
それでも構ってもらいたいと思うのは
彼女という立場の特権。

翔太はいつも私に言う。
"付き合っているんだから、
少しくらい欲があっても良い"。
自分の中に閉じ込めるな、って。
一人で苦しまないようにしろって。
それはお互いの約束だって、翔太は付き合い始めた頃に私に言った。

色々な想いが頭の中を巡る中、
私の両手は彼の片手に拘束される。

「え!?」

顔を勢いよくあげると、
肩にヘッドフォンを落としている翔太の姿。
自然な仕草で私の手をそのまま引き寄せると、指先にチュッとキスをした。

「ニコの考えてる事、分かるよ。」

「え・・・?」

いつものからかうような眼差しと違う、翔太の真剣な表情に、不覚にも(?)胸がトクンッと脈打つのが分かる。

「・・・・・・、ばぁか。」

「はぁ!?」

(私の束の間の胸キュンを返してよ!)

「なによ、翔太が意地悪するからでしょ!?私の欲を引き出すためにそんな小芝居しないで良いから!」

「あれ?バレちゃった?
だってお前、いっつも勢いだけはあるけど欲を出すの下手だし・・・ちょっと見てみたいなって思っただけ。」

「そんなに欲出してほしいならこれから遠慮しないから覚悟してなさいよ!」

「何でいきなりそんな事に・・・。」


でも実は彼女がそう言ってくれて安心した自分がいた。
いつもは明るい女の子ではあるけど、
実際色んな場面で遠慮することが多い。
そこが気に入っているのもあったけど、
正直彼氏としては少しの我が儘や欲を見てみたい気もしていたから。


「ま、引っ掛けたのは俺だし・・・何の欲でも受け止めることにするか。」

「引っ掛けたとか言わないで!」

「はいはい。
申し訳ございませんでした。」

「気持ちがこもってないし!」

(しかも棒読み!)








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