短編執事シリーズ

□短編執事シリーズB*『賑やかなお屋敷』
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廊下の向こうから賑やかな音、声。
それもすっかり聞き慣れたもの。

「あねうえーっ!」

ウルウルッとした大きな瞳。
少しくせっ毛のある真っ黒な髪。

早風 彼方 (はやかぜ かなた)。
10歳。
ちょっとおませさんだけど可愛い弟。

「あねうえ!」

ぎゅーっと抱きついてきた暖かい温もり。私からも抱き締め返せば彼方が笑った。


「彼方様、
本日のテストはいかがでしたか?」

「あっ、葎季!!」

こちらにゆっくり歩いてきた葎希に
聞いて聞いて、と言わんばかりに抱きつく彼方を見て笑みが零れる。

「俺ね、テスト自信あるよ!!」

「そうですか。結果を聞くのが楽しみでございますね?」

優しく微笑んで彼方の頭を撫でる葎希は実のお兄ちゃんのように見える。
父様に関してもそうだけど、なんで葎希はこんなにも馴染めてるんだろう。
いつもすごいなって思っちゃう。

「もし彼方様が新記録を更新したら、私からプレゼントを差し上げます。」

「え!ほんと!?
あ、でもそうゆーのテストやる前に言ってくれた方が良かったのに…。」

「申し訳ございません、…今思い付いたもので。ですが、自信がおありのようなので問題ないでしょう?」

その葎希の言葉に彼方がピクッと身体を僅かに揺らせて反応する。

「葎希は意地悪だなっ!」

「そうでございますか?…私は彼方様に嫌われてしまうでしょうか?」

「嫌うわけないだろ!
しかもあねうえの大切なヒトだ!!」


彼方が叫んだ言葉にふっと微笑む。
将来的には、
こんな風に自分達の子供と賑やかに暮らす日が来るのかな。
そんな事を思いながら、2人を優しい眼差しで見つめた。




fin
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