企画物議

□堕落
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※どSな静雄は、お好きですか。
暴力・性的な意味で18歳未満は回れ右ですぞ。









夏を待つプールサイドにまで追い込まれ、グラウンドからは部活を終えたのか照明が消されてしまった。
その中放課後に始めた喧嘩の決着がやっと着こうとしていた。
短ラン姿の少年、臨也は対峙しているブレザーを着た少年の静雄には常々優位に立っていたいと思っていた。
知恵も狡さも比べるまで無いほど長けていると自負しているし、いざ追い込まれても覆して悔しがらせてやれる自信もあった。
そして今はギリギリまで引きつけて、水のないプールを通って逃げようと考える。今頃は下駄箱に置き去りにされた鞄が教師に拾われているだろうか、気にはなる。
力で押す事しかできない静雄には、俊敏さに磨きをかけてきた自分には追いつけないとわかっている。だが、このところ相手も喧嘩慣れしてきたのか自分にあと少しのところまで追いつけるようになった。
前までは余裕で逃げ切れたのに、この頃は紙一重でどうにか逃げている状況だ。
それが悔しいのに少し楽しくもあるけれど、怖くもある。
未だに未知数な静雄の内面は、自分が思うよりずっと深く感情や何かが植ってそうで、知るのも見ないふりをするのも怖い。

お互い走り回り、暴れてきて疲労に息が上がっていた。ここで逃げそびれたら一発は殴られるだろう。膝が疲労で笑っているけれど、じり、と足を一旦前に出して相手を動かせる。
案の定、殴ろうと飛び出した静雄を待たずに空のプールへと飛び込み、そのまま駆け抜けてフェンスからバイバイと言う予定だった。

ところが静雄はそう読んでいたのか臨也がプールサイドを蹴り飛んだ瞬間、同じ様にプールに飛び込み、空中で胸倉を掴んできたのだ。
バランスを崩された臨也は、まさかの事態に驚愕の声すら上げれず、静雄の勢いのまま背中から着地する羽目になる。

「ーーーっ!!」

背中の衝撃は胸を圧迫し、ぶつけなかったはずの頭までくらくらとさせる。静雄はより胸倉を強く握り締めると、喉がアンダーシャツで軽く絞められてしまう。
自分を跨ぐように押さえ込む静雄の顔は、陰になって見えやしない。

「………っ、は…とうとう、つかまっちゃったなぁ…」

抗うより流れに任せて隙を見た方がいいと、されるがままにしておいて体力の回復を待つ事にした。
ただ、本気で殴られたら二度と目覚めないかもしれない。

「……屈辱だね、こうして君にねじ伏せられるなんてさ。こんな時間いらないから、さっさと殴れよ」

ただでさえ立っている時も身長差で見下ろされているというのに、またこんな態勢で見下ろされてしまうなんてとんだ厄日だ。
体を酷使した疲労を回復させるために荒く早い呼吸をしているが、ぞわぞわと緊張して浅い呼吸になっていく。
しかし静雄は、そんな臨也の挑発には無言で胸倉を強く締め上げることで答える。
短く痛みと苦しさに声を上げると、鼻で笑う声が聞こえた。

「なぁ折原、殴られる前にもっといい屈辱を味わないか」

珍しい、シズちゃんが笑っている。
でもそんな笑い方なんて見た事がない、まるで、まるでーーー

自分で考えた事なのに、恐ろしさに血の気が音を立てて引いた。
だがそれ以外に思いつく言葉はない。


「ただし、抵抗したら容赦なく殺す」



獲物を前にしたケモノみたいだなんて




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