企画物議

□葛藤(後)
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※エロくないけどエロシーンです・・・義務教育な方はお控えください。ちょっと18禁近い






 動けないまま抱き合っていた時間はどれほどだったろうか。短いような、長いようなわからない。臨也が静雄のその首へ縋り付いている合間、らしくないと何度も自身へ言い聞かせてしまっても、しがみついていないとすぐに泣いて崩折れてしまいそうになる。こんなに恥ずかしく、もどかしいものなのかと。
 他人とも言える身体をどう扱われても平気だと思っていたのは、あっさりと卑劣な行為で覆されてしまった。そしてまだ皮膚に残るあの感覚に怯えて吐き気を催すほどだというのに、今はこうして静雄に抱きしめられていることで少しずつ払拭され、忘れられた。あのシズちゃんに、といういつもの罵声も今は思いつかない。
 
 動けないまま抱き合っていただけの静雄も、腕の中で震える女のその背中を、また宥めるように優しく撫ぜ、首元に埋めるその顔をそっと覗き込む。先ほどよりもずっと力を抜いた唇が、ゆっくり頬を滑り、臨也の唇を探り当てていく。自ずとその唇に口寄せ、しっとりと濡れた唇を重ねあえば言葉なく双方の意識が、互いへ暗黙の了承を感じ取らせていく。
 食むように口付けられ、ひくりと臨也が喉を震わせれば静雄の唇はゆっくりと滑りその白い首筋を辿る。唇が首筋をなぞり、柔らかい髪が鼻先をくすぐって掠めていく。汗ばんだ皮膚を撫ぜられていけばそのこそばゆさに息が詰まり、触れられた箇所からじりじりと甘い痺れが皮膚を覆う。抱きしめていた腕の力を抜き、静雄の動きを妨げないようやんわりと抱きとめるだけで精一杯だった。

 背中を撫ぜていた手が、そっと腰を辿って前に滑り、明確に胸の膨らみを布越しにそっと捕えられる。まだ自分でも慣れない胸の膨らみには確かに神経が通っていて、大きな掌に収まってしまうそれを形を確かめられるように触れられてはびくりと足が震えて反応してしまう。
 気恥ずかしさに顔が熱くなり、固く目を閉ざすも触れられるその手の動きをただ感じ取る。変化する前の身体であれば感じれない感覚は、じわじわと羞恥よりも期待に熱を高められていく。ぎこちなくだがゆっくりと、壊さないような手つきで胸に触れ、鎖骨やその首筋を唇で食んで滑り落とされる。
 こそばゆさとむずがゆさに思わず喉奥に息が詰まり、静雄のシャツを握り締めて恐々と触れられる緊張に耐えようと硬く目を閉ざしていた。変化した身体は随分と皮膚が薄くなって、僅かに動いた静雄の服や手の感触が皮膚の裏側まで触れていくような熱さを感じてしまう。息を吐き出すことすら侭ならない緊張に、強張ってしまった肩を撫でられ、そっとバスローブの襟から骨張った大きな掌がゆっくり滑りこまされる。
 布越しではなく、直に柔肌に触れる掌は、乳房の形をなぞり、柔く揉んでいくも、時折バスローブに擦れる感覚に身体を震わせていく臨也の反応を受けて少しずつ動きが急いていく。

「ん、・・・」

 胸の膨らみをなぞりながら、少しずつバスローブをずらし、その細い肩が露わになると、首元に唇を落としていた静雄はその胸の突起をつとつまむように触れていく。明確な刺激を受けて喉奥が鳴るような声を上げてしまい、自分の声に驚いた臨也がはっとシーツを掴んでいた片手を口元に宛ててしまう。
 いつもは自分に攻撃してくる指先で、胸の突起やその乳房をぎこちなくだがまさぐられていると思えば、よくわからない感情がぐるぐると回り、びりりとした痺れが腰やその内側へ溜まっていく。
 シーツを撓ませるように、足先がひくりと震えて反応してしまう。あの男らとされていることはそう変わらないはずなのに、感じているこの感覚は全然違う。少しずつ知らない熱が、腹の奥でうねるようにこみ上げられる、悦楽。
 汗ばむ肌の上を鎖骨や胸元と唇を滑らせていた静雄が、そっと乳房に口付け、その突起を口に含んでいく。

「あ、っ・・・」

 胸にふっと息を吹きつけられて背中が跳ねるほど身体が驚き、敏感な突起を咥えられ、暖かな滑りが纏わりつく。指先でいじられるよりもぐっと強い快感が皮膚を突きぬけ、じんと背筋が痺れていく。
 まだ幼い顔と身体、薄い桃色をした乳首を方や舌先で、もう片方がその掌で覆われてなぞられる。息を詰めて与えられる感覚に身もだえ、びくりと身体を震わせてしまえば、纏っていたバスローブは腕に袖を残したまま上半身を曝け出してしまっていた。
 それでも、身体を見られるのが恥ずかしくなって胸を弄る金髪の頭、その髪に指を絡めて抱き寄せてしまう。自分の身体を舐られる感覚に、緊張や羞恥よりも、これからもっと触れられるであろうと期待が熱を持って身体を覆う。初めて味わうその熱さは、ただ困惑にすべてを投げ出してしまいたくも、逃げてしまいたくもなるほど。
 耐えず迫りくる甘い痺れに、力いっぱい静雄の背のシャツを握り締めていたが、ゆっくりと身体を起こした静雄が震えて固く目を閉ざす臨也のその頬にゆっくり指を這わせた。

「・・・悪い、・・・無理だと思ったら、思い切り蹴飛ばしてくれ」

 そっと頬を撫で、汗で張り付いた髪を優しく払う仕草に息じゃない、違う何かが胸につかえてしまう。そんなに優しい手つきができるのかと信じがたいほどに優しい手だった。思わず目を開くも知らず涙が溜まっていたのか、僅かに目の前が潤んでよく見えない。それでも、臨也の顔を覗き込む静雄は余裕がそうなさそうな、切なげな顔を向けていた。
 本音を言えば、そう覚悟が定まってないのだが、小さく頷くと静雄は少しだけ申し訳なさそうに笑み、強張っている臨也の前髪をそっと払いのけて短く唇を落とす。体躯が小さくなったからか、随分と静雄が大きく見えてしまう。
 男であれば身長は少し見上げる程度であれ、細身の筋肉質な静雄と華奢な臨也ではそう大差ないよう思えていた。女性から見た静雄は、さぞや頼りがいのある男と見えるだろうな、と片手で着ていたシャツを脱いだ静雄を見ながら考えてしまう。
 
 その瞬間、ガラスの棘でも飲み込んだかのような痛みが胸に刺さる。



 思わず手がその痛んだ箇所をはっと押さえ、不規則に乱れだした動悸にひゅっと一瞬だけ身体の熱が引いていく。急に神妙な面持ちになった女に気づいて、窺うようにその顔を見た静雄だが、なんでもないと慌てて笑う。
 少しだけ気後れた静雄の腕を取り、改めて自分の細くなった手と、引き締まった腕を見比べて考える。

このまま、女であればこうして過ごすことができるんだろな、なんて。

 一度引っ込んだはずの涙がまたこみ上げてしまいそうになり、静雄の手をバスローブの紐が結わった箇所へそっと引き寄せる。泣くのを必死で堪えていたために、変な顔だったかもしれないが大丈夫と言葉にしないで笑って頷いてみせた。

 そんな女の様子に一瞬眉間が強張ったのだが、小さく頷き返してそっと結び目を引っ張って解いていく。するりと身体から離れていくバスローブの衣擦れの音は、鼓動音が耳から飛び出すほど煩くて少しも聞き取れやしなかった。脱ぎ捨てるにも身体は緊張して動けず、ベッドにバスローブが広げられた上に肢体を晒し、その生地を何度も握りなおしてはこの緊迫する空気を浅く早く吸い込む。

 ぎし、とベッドのスプリングが鳴り、静雄がゆっくりと女の身体に覆いかぶさっていく。目鼻先で視線がかち合う寸前でぎゅっと目を閉ざした臨也は、どうしていいかわからず片手を引き締まった背に回した。
 自分を抱きとめようとする筋肉の動きを感じ、空調で冷やされた肌の感触に腕を滑らせる。学生時代になんとなく見ていた背中が思い出される。よくもあんな怪力が出せるものだと思う程薄い、引き締まった背中。女の腹や腰、背中とゆっくり撫で回す動きに蠢く筋肉の動きをなんとなく腕や手で触れて確かめる。まるで撫でるように、そっと優しく。

 女の細い指が背を撫でるこそばゆさに、首筋が粟立ちぞくりとした興奮が皮膚に染みる。その感覚に応えるようにそっと女の細く伸ばされた脚を撫で、細い腰や背中に何度も掌をなぞらせてはその息を詰まらせていく。慣れない手つきながらも何かしら反応されることに興奮と安堵がこみ上げる。こんな自分でも、受け入れてもらえるという安堵感。それがお互い沈黙の中共有していた感情。

 徐々に女の身体を弄る手が荒々しくなっていく。必死でしがみついてくる女の身体は柔らかく、汗ばんでひたすら浅く早い呼吸に胸を上下させ、艶かしく伸ばした脚をひくつかせていた。傷ついている女に無理強いはしたくなかったが、そうも言っていられないほど余裕が消えてしまう。胸や腹と手を這わされ、鼻にかかるような吐息を吐き出しては少しずつ脚の力を抜いて静雄の身体をより密着させようと身体を寄せてしまう。
 息もかかるほどお互い密着し、静雄が音を立てて女の身体に唇を落とし、細い指を口に宛ててじれったいようなこそばゆさに身体は震える。ゆっくりと肌を撫ぜる大きな掌が、臍あたりを掠め、細い太ももをゆっくり撫でれば脚が感覚に怯えて跳ねてしまう。
 それでも抵抗を見せないことに静雄の手はゆっくりと下肢の付け根に伸ばされ、薄い茂みを指で割り、閉ざされたままの秘部へと触れていく。敏感なそこへ僅かに触れられただけで、喉奥で甘い声が引っかかり、しがみついている腕に力が篭る。
 
「・・・・っ・・・」

 それでも下手に手を動かすまいとぎゅうとばかりに静雄を抱きしめ、ひたすら少しずつ秘部を探る動きに意識を向ける。長くて骨張った指が少しずつ茂みに隠された秘部を掻き分け、しっとりと湿りを帯びだした割れ目に触れられれば身体は跳ねて声なく喘いでしまう。
 緊張に強張り、恐怖に戦きながらも身体は素直に愛撫に反応していた。その証に静雄の指に滑りを絡ませる秘部は強張る身体とは反して更なる刺激を欲するように少しずつ解されていく。
 それでも羞恥から脚が変に強張り、敏感な神経に触れられる都度その脚を震わせて甘い痺れに悶えてしまう。僅かに静雄が動いただけでもその刺激を拾って、じんじんとした痺れが触れられる秘部から腰へと熱が押し寄せていく。
 全身を強張らせて声を詰まらせる女に、緊張と恐怖を感じさせてしまっていると見た静雄が優しく項垂れたその顔、額や頬に唇を落とし、くすぐるように首元へと顔を寄せる。汗ばみだした首筋を舌でなぞられれば、くすぐったさに肩を竦めて僅かに力が抜けていく。長い指が優しく下肢の割れ目を撫でる刺激が一瞬強く感じ取られ、喉奥で甘い上ずった声が鳴り、鼻から抜けてしまう。
 臨也自身でもわかるほど秘部が濡れていると感じられ、そんな身体の変化の気恥ずかしさに覆いかぶさる静雄に抱きついてしまう。空調が効いているはずなのに、お互いじっとりと汗ばんで荒い息をただ繰り返してその温もりを感じ取っていく。肌と肌が触れ合うことで得るぬくもりが、期待とは別に安心感がそれぞれの胸に広がっていく。こうして他人と近付くことがこんなにも心地いいのかと。

「ふ、ぁっ・・・」

 随分と脚の力が抜け、静雄の指を濡らしていた秘部に、その滑りを擦りつけるような動きをされるとびり、と強い刺激が走る。か弱い声だなと臨也すら思える女の声が、静雄に聞こえるのが嫌だと思っていたはずが、喉の力も抜け、その声を堪えきれなくもなる。指の動きを追うような声がかみ締める唇から漏れていき、その声をさらに出させようと静雄は肩や胸元にももう片手を這わせ、首筋を強く吸い上げた。
 割れ目を撫ぜる都度にまとわりつくような水音が静雄の指に絡み、それを聞き取れた臨也に羞恥が湧き上がってしまう。だが、壊れ物を扱うような触れ方に徐々に焦れてしまい、ぐっと息を呑んで脚を少しずつ広げて強張りを抜こうとゆっくり息を吐き出していく。肌の上を静雄の手や腕が滑るたびにちらついていた悪夢の影は、いつの間にか随分遠い向こうになってしまった。ぼんやりと薄目で見える静雄の顔や身体がそこにあると思うと、目を閉ざして身体を開くことに何の恐怖も感じなくなっていた。

「ぁ、んぅ、っ・・・!」

 ふっと力が抜けた瞬間、割れ目を探っていた静雄の指がゆっくりと秘部に潜りこまされていく。一瞬分け入られる痛みに竦んでしまったが、徐々に内側に指が押し入ってくる感覚にはっと息を呑んでしまう。少し不器用だが慎重に指を埋めていく。身体の内側、秘肉を割って指を潜らせてくる静雄の指が目を閉ざしていてもわかる。ましてや割れ目をなぞられた時よりも直に神経を刺激されて背を反らして震えてしまう。
 ゆっくりと指を埋め、絡んでくる熱や滑りに目が眩みそうになる静雄は、慎重さを徐々に欠き、すぐにでも貪りたくなる欲望を焚きつけられていく。それでもまだ、知り合って間もない女性にこんなことをするのに躊躇してしまう竦みは引かない。引き返そうにも触れる温もりや、顔を上気させ必死で喘ぐ声を堪える女の顔を見てしまえば、そのままずるずると欲望のままに掻き抱きたくなる。理性がどうにか、薄い糸に引っかかって残るだけですぐにでも吹き飛ばされてしまいそうだった。



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