〜†君がいた夏†〜

□絆
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ー帰宅ー

『母ちゃん ただいまぁ〜』


悠太は家に帰るなりサンダルを脱ぎすて
大きな荷物と、麦わら帽子を玄関に 無造作に置いた



『おかえり悠太。

無事に帰ってこれたかい?
真っ黒に焼けて 男前になった
じゃないかぁ

静岡のじぃちゃんちは
楽しかったかい?』



母ちゃんは
居間で洗濯物を たたみながら
笑顔で迎えてくれた



『うん‼ すげぇ楽しかった‼』

悠太は はち切れそうなほどの
笑顔で 母ちゃんに報告をした



『そりゃぁ 良かったじゃないか

きっと じぃちゃんたちも
悠太が来てくれて 喜んで
いただろう?

母ちゃんも お礼の電話を
しないとねぇ』




悠太は 興味本意と半信半疑な気持ちで
さっそくながら
お待ちかねの あのセリフを口にした



『母ちゃん、あのさぁ…』

悠太は しばらく
口を閉ざした




『なんだい?』


『オ…オイラ…母ちゃん…

ゴ…』




『あのさぁ 悠太。』


洗濯物を たたむ手が止まり
母ちゃんの言葉が
悠太の言葉をさえぎった



『なっ!なんだよ』



母ちゃんは すくっと
立ち上がり
悠太に近寄った



『お前は 何があっても
母ちゃんの子だからね』



『はっ!?なんだよ突然っ』



一瞬、あの日の出来事が
見透かされたんじゃないかと ヒヤっとする



『さぁねぇ、母ちゃんにもよくわからないんだけどさ 女の勘ってやつ?』


少しさみしげな顔をしていたけれど
一息ついて 再び洗濯物をたたみ始めた



『息子が帰って来て
早々の言葉が それかよ

顔にも合わねぇこと
言うから、あしたでも雪
降るんじゃね?』



わざとらしく 外を見る



『なんだいっ!!
その口の聞き方は!!』



ゴツンッッ!!!


『いてぇー‼』


素早い母ちゃんの
ゲンコツの一撃が
悠太の頭上をヒットした





『いってぇなぁ〜!!
なにすんだよ!!』




『ようし、それでこそ
母ちゃんの子だ』



『はぁ?意味わかんねぇし』


ズキズキと痛む頭を
さすりながら

今起きている出来事に
少し混乱していた



『悠太、これからも
母ちゃんの側から
離れないで居ておくれよ』


恐い顔つきから
優しい顔になり、
そう言って 悠太を思いっきり抱きしめた



『かっ…母ちゃん
ぐるじぃ〜!』


『あはは
すまない すまない

ついつい気力が有り余って』


悠太の体から
そっと 手を離す



『ああ〜…し…死ぬかと思った…

つか!!フォローになって
ねぇし!!!』




『けど悠太、本当に
母ちゃんの子供に
生まれて来てくれて
ありがとうねぇ』



いつもは 決して
そんな事は 口にしない
母ちゃんが

どこか誇らしげな表情で
そんなことを言った




『オ…オイラも
母ちゃんの子供で
よかったよ』



ぎこちない声の悠太



『んで、色々 悪ガキでゴメン。

それから…』


顔をあげて


『これからも悪ガキだけど
よろしく!!!!!!!』
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