〜†君がいた夏†〜

□夏休み
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*8月10日

悠太は一人 夏休みを利用して、東京から静岡の祖父母の元へ遊びに来ていた



家に着くと、祖父母が優しく出迎えてくれ、
庭の畑で取れたトマトを差し出してくれた


“チリンチリン♪”
玄関越しの部屋の窓際から
聞こえる風鈴の音。

そこから見える景色は
緑がたくさんあって
とても落ち着ついた。



『じぃちゃん、このトマトうめぇなぁ〜』



『そうだろう。
うちで作ってる野菜にゃ
どれも 一つ一つに愛情注いで、育てているからなぁ…

悠太も もう来年にゃあ
中学生かぁ…
この間まで 米つぶくらい小さかったのになぁ〜

あっはっはっ』



『じっ!じぃちゃん!!
オイラ、米は好きだけど

米つぶほど、そんな ちっちゃくねーもんっ!』



両手でトマトを頬張りながらムキになっている悠太を見ていた、祖母が

台所から顔を出し



『おじぃさん、あんまり悠太をいじめちゃ可哀相じゃないですか…』


『ああ…すまんすまん
あんまりに悠太が可愛いくてな』





時々いじわるな事を言う
けど優しいじぃちゃんと

いつもオイラの味方でいてくれるばぁちゃん。


そんな二人がオイラは大好き。





そして、ばぁちゃんは

大きなお盆に沢山の
スイカを切って出してくれた


『さぁさぁ、悠太 スイカを切ったからお食べ』



『うわぁ〜うまそぉ♪
いっただきま〜す』




やっぱり夏はスイカに限る




そして、悠太がスイカを手に取ると

じぃちゃんが静かに 口を開いた



『悠太が最後にウチに来たのはいつだったかのぅ…』



そう言って じぃちゃんは
重い腰をあげて、窓際へ行き

セミの鳴き声を聞きながら
眩しそうに、夏空を見上げた



『そうじゃ!
このまま じぃちゃん達と一緒に住んだっていいんだからな?』


目をキラキラさせながら
振り返るじぃちゃん



『コラコラおじぃさん!

そんなワガママな事を言わないんですよ!』



『ああ…ばぁさんは、ワシには冷たいんだねぇ…』




あっはっはっはっ



三人の賑やかな笑い声は
青空へと響き渡った
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