Short dream(DB、企画)

□7年目の誓約
1ページ/1ページ




マフィアを殲滅するためにボンゴレ10代目を乗っ取る計画は、そのボンゴレ10代目本人によって阻止されて、
骸さまは復讐者の手により、牢獄で囚われの身となってしまわれた。

その後、再び脱獄を試みたようだが、骸さまは犬と千種を足手まといだといって遠ざけたらしい。
途中から骸さまと別行動となった犬と千種は、なんとか追っ手から逃げおおせた。
しかし、いくら待っても探しても、骸さまの姿を見つけることができない。
のちに、犬と千種を逃がすために骸さまは自ら囮になったと分かったのだという。

なんとか日本に戻ってきてそう涙ながらに語った犬と一緒に、わたしも泣いた。



「一緒に来ますか?」



エストラーネオの実験体で行くあてのなかったわたしに、手を差し伸べて、居場所をくださった骸さま。
あの方の恩に報いるためなら、この身を、この命を、道具として差し出すことなどいとわない。
あの方のために利用されるのだと思うと、幸せを感じられた。

だから、骸さまのいない、わたしの世界は。
存在意義をうしなったわたしの気持ちがそのままあらわれ、色あせていた。
あなたが、あなただけがわたしの世界を彩る存在だった。



9人で復讐者の牢獄を脱獄すると、ボンゴレ10代目のいる日本へと渡った。
履歴を操作して転入した黒曜中を制圧して、拠点を確保する。
これからの計画のために必要だった情報屋:ランキングフゥ太も捕らえ、いよいよ本格的に行動を起こすことになった。



「犬と千種は、このランキングに載っている人物を順につぶしていきなさい。
ボンゴレ10代目を炙りだします」

「ケンカランキングってことは、ブチのめしていいってことれすかー?」

「ええ、手段は問いません。
ですが、連鎖的なものだと“あちら側”にわかるような痕跡を残しておくように」

「では指を切るか、歯を抜くか…いずれかの方法をとることにします。
行くよ、犬」

「オレに指図すんなっての!」

「骸さま、わたしは?」

「名前には、ある病院へ潜入してもらいます。
炙りだしていく過程で、医療施設にボンゴレの関係者が現れるかもしれません。
それから、僕からの指示があるまでは、そこから出てはいけませんよ」

「わかりました。骸さまのお言葉があるまで、わたしはずっと待ってます」

「クフフ…いい子ですね。期待していますよ、名前」

「はいっ!」



骸さまの役に立てることによろこびをかんじ、骸さまからかけてもらえた言葉にこころがおどる。
この命にかえても、絶対にこの計画を成功させてみせる。



犬と千種によって倒された患者が、次々と運び込まれてくる。
歯で数えることにしたらしく、運び込まれる男たちの抜かれた歯の数が減っていくたびに、
わたしたちの目的を達成するための、手段の確保へと、一歩ずつ近づいているような気がした。

遂に、マフィアの関係者と思われる男が運ばれてきたとき、
わたしの心に広がるのはとどまることのない歓喜だった。
男の妹と思われる少女も、これから相手を追い詰めるのに使えるかもしれない。

共に脱獄してきた殺人鬼を介して、骸さまにこのことをお伝えした。
しかし、このまま自分の足で黒曜ヘルシーランドへ戻ることはできない。
だって、骸さまに言われていたから。



「僕からの指示があるまでは、そこから出てはいけませんよ」



しかし、いくら待てども骸さまからのお言葉を聞くことはなかった。
そして、全てが終わった後で知ったのは、
骸さまがボンゴレ10代目に敗れて、犬や千種も一緒に復讐者の牢獄へ連れ去られてしまったということ。
そして、わたしは骸さまの幻覚に守られて、また今回の計画に直接関わらなかったとして見逃されたのだということだった。

骸さまが完全に倒された後も、わたしは巧妙にまもられていた、と小さな赤ん坊がつぶやいていた。
骸さまをわたしから奪ったボンゴレ10代目への憎しみや、目の前の赤ん坊への怒りよりも、
骸さまを失ったことに対する悲しみがわたしにとっては一番大きかった。

目の前の風景から色がぬけて、音が消える。世界でたったひとり取り残されたような気持になる。
骸さまだけが、わたしのキャンバスに色をのせることができたのだ。



「少しまとまった金が手に入ったので、名前には新しいワンピースを用意しました。
…ああ、よく似合っていますね」

「あの男が僕を拾うようです。マフィアのボスだそうですから、復讐の足掛かりにしましょう。
名前も一緒に来るといい」

「これから日本へ飛びます。名前も付いてきてくれますね?」




今までずっと、わたしをそばにおいてくださった骸さま。
たとえ計画遂行のための道具であり、駒であったとしてもあの方の役に立てるのなら本望だった。
7年前から今まで、ほとんどの時間を牢獄の中で過ごしたけれど、全く苦ではなかった。
だってあそこには、骸さまやみんながいたのだから。

わたしはいま、ひとり自由の身となったけれど、こころは全く満たされていない。だってここには、誰もいないから。
でも、ここにひとり残されたわたしだからこそ、なにかできることがあるのかもしれない。

7年前に救っていただいてから今まで、わたしは骸さまのために生きてきた。
だけどいまここで、わたしはわたしの存在意義を見直そうと思う。



骸さま、あなたに誓います。
わたしは、いまからは自分のために生きようと思います。
そして、わたしはわたしの世界を取り戻すために、あなたを救い出します。
いますぐにはむりでも、5年かかっても、7年かかっても、10年かかっても、いつかかならず。

わたしはあなたを待っています。
どうか骸さまも、わたしのことを待っていてください。






====================
意味不明な独白文章でしたが、読了ありがとうございました。

なぜか、後半の文章がいきなり消えてしまいました。なので、後半部分は書き直してあります。
消える前の文章のほうが気に入っていて、できるだけ近づけてみたのですが、
やはり難しくて、世界観が少し変わっているかもしれません。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

(・誓約…固く誓うこと。また、その誓い。)

15/03/09 春樹(書き直し)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ