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EPISODE5 進め!フォバギ〜一派団![前編]
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【第一話】

一風変わった屋根の下









カタン…コトン…



あの『医者』が部屋の隅で薬を調合している。湿気とりらしい装置も機械音を一定に保っている。ついには人間の呼吸も聞こえるほど。何もかもがこの場では酷く大きく聞こえた。


誰も口を開こうとしないのだ。


この場に二人しかいないのも原因の一つだ。けれども、彼を見守るサーズの醸し出す雰囲気が1番そうさせているのかもしれない。




Dは、まだ目覚めない。




−−−




人里から少し離れた森の中、『変わった医者』の住む小さな家があった。家そのものがかわいらしいキノコの形をしており、屋根はピンクと黄色の水玉模様の房だ。当然下が部屋になっているが、たった一室だけである。そこで食事・洗濯・診療と全て済ませるという、仕事場とプライベート空間が一緒の家だ。
全体的に明るい感じの部屋で、木製の丸い椅子にベッド、丈のの高いテーブルに棚と一人暮らせるだけの設備は整っていた。患者はそう来るわけではないらしく、患者はDの一人だけ。
そんな状況下に、サーズとDはお邪魔していた。




カタン。キィィ…




調合が済み、医者は薬を持ってとことこと歩いてきた。行き先はベッド、Dが眠る場所だ。その傍らにはサーズが椅子に腰掛け座っている。顔はやはり布で隠してしまっていた。




「はい。今日の分の薬…ちゃんとお前の手で飲ませろよ?」


「…ありがとうな、チョッパー…」




サーズとチョッパーが出会ったのは6日前のこと。Dが急患としてここに運び込まれたのがきっかけだった。最初チョッパーはサーズにかなりビクビクしていたが、今ではすっかり仲良しだ。その理由は…。




「ほらよ、今日の分のわたあめ…」


「おおぉうっ!いつもいつも渡しやがってよ〜っ、嬉しくねーぞコノヤロがっ♪♪」




たまたま持っていたサーズのわたあめから始まった。元々はDへの贈り物の一つだったらしいが、意外にもチョッパーがわたあめに興味を示し、あげてみたところ懐いてくれたとかくれないとか。




「D、今日も起きないな…今日で一週間だぞ?薬も効いてるはずなのに…」


むしゃむしゃ…


「…………」




チョッパーはわたあめを食べながらそう言った。そのせいで緊張感のない台詞に思える。一方サーズは再びDに目をやり顔の布を取り外した。




もりゅもりゅ…♪




「……D…てめェにゃ言わなきゃならねェことが山ほどあるのに…」




サーズが、その肌に触れる。
Dにしては色気が無く、気のせいか青白くさえ見えた。




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