book
□EPISODE2 おれのヒーロー
1ページ/3ページ
宴から一週間が過ぎたのか…
あの時はバカ騒ぎしたりして、本当に楽しかったなぁ。
それが今となっては…。
ガチガチ…ガチン!
「やべェまた動かなくなったァ!!」
「そうだもっと苦しむがいい!そして私の芸術作品の一つになるガネ…!」
「うるせェ!何が芸術だ!ゲホッ…」
おれは今変なろうそく男に捕まっている。
逃げ出したいのに逃げられない。
おれ自身が、カボチャ頭のついた柱付きのでっけェケーキにささったロウソクみたいになっている。
直接そのケーキに足がのめり込んで両足は使えない。
腕を使おうと思っても、ろうそくの柱が手首に付いて外れない。
逃げ出せない。
カボチャ頭から降ってくる霧に喉をやられ、苦しくてたまらない。
どういうわけか身体がろうみたいに固くなっておれのいうことをきかない…。
ガチン…ギシッ…
「くそ〜ッ…何で動かねェんだよ…!」
「さっきも言ったガネ、それはろうの霧。その霧がお前をろう人形に変える…残り5分も満たないだろう。さァ…芸術の名の元に早く死んでくれたまえ…」
気味の悪い男は言う。
頭というか、髪型が3のどう見たって変な奴がこのろうそく男だ。
さっきから芸術だアートだ言ってるけど意味が分からない。
こんなことになったのもついさっきの話だ。
バギーからの仕事が終わって、もう帰ろうと思ってたところに…ヘラクレスが飛んできた。
普通は目をダイヤにして追い掛けるだろ!?ウキウキしながら捕まえようとするもんだろォ!?
…うん。それでずっとヘラクレスを追い掛けて続けてたら、この森に迷い込んだんだ。
あとちょっと!あとちょっとのところでヘラクレスを捕まえられたのに、その時頭を誰かに固い物で殴られて気絶しちまって…。
ったくよぉ…、
人の頭殴ってまで横取りすることないのになッ!
「ゲホっ…ぅ……ぁ…」
ガチガチガチ…ガチン。
こんなことを思っている間に、両手両足の感覚がなくなっていた。
多分顔まで固まり出してる…身体が全然動かない。
ろうそく男を睨みつける力が、もう残っていない。
「ハッハッハいい様だガネ!あがこうとも逃げられない苦悶の表情こそ!私が求めている美術なのだ…!」
このままじゃ
あんな奴の思うつぼなのに−
おれは小さくため息をついた。
ここでもがいてもきっとあいつの思うままだ。
それなら何もせずにその瞬間を迎え入れたほうがいい…そう思った。
上目で頭上に広がる空を何気なく見上げた。
最後まで空は青かったな…。
その時
何かが光って見えた。
あの光り方は太陽じゃない、
だとしたら、あれは…。
ガチン。
おれの身体は完全に固まった。
_