部屋の本

□貴方の声が聞きたい
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「あれから、大分たったな・・・」





貴方の声が聞きたい





俺は、取り立て屋をやめ、普通に生活することにした。外に出ることも少なくなった。
しばらくして、俺は池袋から出た。
トムさんや、新羅、セルティ、サイモン、来良の3人組、門田、色々な人に挨拶してきた。
でも、臨也には、挨拶しなかった。

池袋から出て、早二年。
毎日が騒がしかった日々が、嘘のように静かになった。
あれから幽もちょくちょくとこっちに来てくれた。穏やかで、のどかな生活。嬉しいはずなのに、どこか寂しかった。
何か、心に、穴がぽっかりとあいたような、そんな寂しさだった。俺の心を埋めていた何かが、無くなったみたいな。まぁ・・・気にすることなど無いだろう。


ピンポーン

ドアのほうから、ベル音が聞こえた。
「はーい。誰っすかー」
「久しぶり、兄貴」
ドアを開けると、そこには弟、幽がいた。
・・・・そういえばここ最近会ってなかったな。
「おう、幽か。ほら、入れ」
「うん。あ、」
「ん?どうしたかす・・・・か!?!?!?」
え、あ?うん?あれ、今何された?ん?キス・・・された・・・頬だけど・・・
「久しぶりに会ったってことで、俺からのプレゼント。嫌だった・・・・?」
少し困惑した顔で幽は俺を見上げた。
「い、嫌なわけないだろ?むしろ嬉しいくらいだ」
恥ずかしさを隠して、必死に笑顔で対応した。幽は、ほんのりと微笑をうかべると、中へ入っていった。
「幽、何か飲むか?」
「じゃあコーヒー」
「了解」
コーヒーを飲みながら、幽の仕事のことを聞いたり、こっちでの生活を話したり、まったりした一日を過ごした。
「じゃあね、兄貴」
「おう、遅くなっちまったな、送ろうか?」
「いや、大丈夫」
「そうか、じゃあな」

バタン

「・・・・・」
楽しい時間はあっという間だった。幽と会えたから、寂しさも無かったのに、また、寂しくなった。何だ、この気持ちは。そして、何故か、声が漏れた。

「臨也・・・」

自分で今、何故、臨也の名前を言った?何故、何故、自然と、無意識に出た言葉。
その時だった。

プルル、プルルルル

電話がなった。
俺は慌てて携帯をとり、誰からの電話かを確かめた。

―折原 臨也―

「・・・もしもし」
『あ、静ちゃん?俺だよー臨也だよ☆』
聞きなれた声。少し馬鹿にしたような口調。何か、嬉しかった。
「相変わらずウザいんだよこのノミ蟲が・・・」
『静ちゃんこそ相変わらず酷いねぇーwそっちの生活はどうー?楽しい?俺も行こっかなー・・・静ちゃん?』
「・・・このアホノミ蟲・・!!!楽しいわけねぇだろうが!」
『え、何でさ、俺がいないんだよ?楽しいんじゃないの?弟k・・じゃなかった、幽君も来てくれるんだし』
「うっせぇ!手前が居ねえのに楽しいわけないだろ!」
『は・・・?』
少しの間、間があいた。
先に口を開いたのは、臨也だった。
『俺が、いてほしいの?』
「そういってるだろうが・・・!!!」
『ふーん。じゃあさ、今、俺がいる場所、教えてあげようか』
「いる場所って・・・新宿だろ?」
『外、ベランダ、出てみて』
「??」
俺は言われたとおり、ベランダに出た。
「嘘・・・だろ・・・」
「やぁ、静ちゃん。久しぶり♪」



終わり

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