Crimson Hearts
□Retrace:W
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“君は一体どこにいるんだい?”
それはざわざわと体を這うように私の耳にも届いた
意味がよくわからない
「私の、この濁った眼には‥‥
君の姿が全く映っていないのだがね―――‥‥?」
現にオズは彼の目の前に確かにいるではないか
“此処にいない”
それはある夜考えた
何故、私はここにいるんだろう?という疑問に
何かを訴えるようで
私はあの場にいる理由が欲しかった
此処に存在する意味を誰にも肯定してもらえなければ“私”と言うものが無いようで
みんなは私を“アクス”と呼ぶ
それは記憶の中の少女を必要としている事で
“私”を必要としているわけではなくて‥‥―――
ガタンッ
思考の渦に思わず体制を崩し物音をたててしまい
ギルバート、ブレイクに盗み聞きしていたことを気付かれた
―――‥やばっ
見てはいけないシーンを見たようで罪悪感が生まれ咄嗟に目を逸らす
「おい‥‥アクス‥‥」
「あーっはっはっはっは!!
ついに眼球が腐り果てたか、このピエロめ!!」
ギルバートが戸惑うように私の名を口にすれば、突然アリスが立ち上がり我慢出来ぬとばかりに大きな笑い声を上げた
「何をわかりきったことを言っている!」
「!?」
アリスはオズの首に腕を回し勢いよく引き寄せ、当然なことだというようにきっぱりと言った
「オズは “ここ”にいるだろうが!」
照れている様子のオズと鼻で笑い、してやったり顔の満足げなアリスを前にし
「‥‥‥‥」
ブレイクは明後日の方向を見てため息を吐いた
「じゃ そういうことで。」