Crimson Hearts
□Retrace:V
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それは、思わず彼を抱き締めてあげたくなるほど
悲哀に満ちた 絶望の物語
けれど、彼は絶望の淵にあった
微かな希望
そして真実‥‥―――
彼女の願いに縋るように生きている
私はそれを知ってしまったんだ
彼の今は捨て去ってしまった
昔の名と共に‥‥―――
Retrace:V
‐混沌の記憶‐
...live in darkness and super stition
「ん‥‥‥」
虚ろな意識のまま見慣れぬ天井を見つめて
寝心地が良いふかふかのベッドに寝かされている状態でぼんやりと考える
ここはどこ‥‥?
私の家は‥‥?
「オヤ
目が覚めましたカ?」
隣からした声にのろのろと視線を動かす
視界にしっかりと白髪の青年を捉えることが出来た
「‥‥‥。」
「いやぁ〜よかった。
意識を失う前にかなり苦しそうでしたからネェ
延々目覚めないかと」
えーと‥‥この人は‥‥
明るい声とニコニコとした笑顔。
円卓に脚を組んで腰掛けている彼を思い出そうとすれば
何かが外れたようにあの衝撃的な出来事がどっと脳裡に押し寄せてくる
寝ぼけていた脳も普段の機能を取り戻した
「貴方は‥‥」
「私はある公爵家に仕える者
名をザークシーズ=ブレイクと申しマス」
「公爵家‥‥?」
「オイ!オレ様の紹介は無しカ!?」
「‥‥‥っ!?」
驚きに息が詰まる
青年がふわりと立ち上がり、意外にも恭しく名乗ったかと思えば彼の肩に乗せていた人形がひとりでに話し始めた
ぶ‥‥不気味過ぎる‥‥‥っ!!
「ああ‥‥悪かったね。エミリー」
未だにひとりでにカタカタカタと動き続ける人形にブレイクはうっとりと語りかけている
‥‥うわぁ‥‥‥
あの化け物に襲われた時とまた違った質の恐怖に駆られた
「この人形(コ)はエミリー」
「ヨロシクな!小娘ー!」
「‥‥‥はぁ」
そのノリに相槌を打つこともままならない
こんな奴に捕まってよかったのだろうか?
でも‥‥彼は確かにやっと見つけた手掛かりで間違いないし‥‥
頭を抱える勢いで1人悶々と考えていればエミリーとのコント(?)を終えたのか
ブレイクはファンシーな絵柄の缶を何処からか取り出し、今度はベッドに近い棚の上に座った
徐に缶の蓋を開けるとアメを取り出し此方にひとつ差し出される
「ありがとう」
受け取ったアメを口に放り込みコロコロと転がす
甘い味が口内に広がり強張った気持ちが少しほぐれた
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