Crimson Hearts

□Retrace:U
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‥―――そうか
      キミも目覚めてしまったんだね



誰‥‥?


――大丈夫

   キミならきっと見つけることが出来る


あなたは‥―――私の事を知っているの?


‥―――よく知っているよ
       でも、私からは何も言えない



「‥‥‥‥‥」


何も‥―――ワカラナイ‥‥



誰の声に応えればいいの?




「‥‥‥‥‥!」



‥―――さぁ
      一緒に行きましょう?―――‥




「アクスッ!」

「いやぁああああああっ!!」








Retrace:U
 ‐困惑の覚醒‐

.....shadowy past










「大丈夫かい?
随分うなされていたけれど‥‥」

心配そうに私の顔を覗き込む
シワを彫り込んだ顔の造形からして優しそうな女性が問いかけてくる

乱れた息を整え額に張り付いた髪をはがす

「ちょっと気分の悪い夢を見ただけ。
大丈夫、心配ないよ」

〔誰‥‥だろう?〕

ナチュラルに応えてしまったが私はこの女性に覚えがない

目の前の女性は私の言葉に安心した様子だ

よく見ればこの部屋にも見覚えは無い

「そうかい?
私は街の役場まで行ってくるから留守を頼んでいい?」

「うん
行ってらっしゃい。お母さん」

〔‥‥‥‥っ!?〕

すっと出てきた言葉に驚愕を隠せず口を両手で押さえて目を見開く

なんで‥‥!?

知らないはずなのに‥‥っ

「アクス‥‥本当に大丈夫なのかい?
今日少し様子が変よ‥‥?」

「‥‥――――っ!」

再び慌てて顔を上げて女性を見つめても何を言っていいかわからず、思わず部屋を飛び出した



記憶の混乱


そうと表現するしかないこの不快さ




「‥‥嘘‥でしょ?」


部屋から飛び出し、そこで目に入った光景は

私には馴染みの無いモノばかりで溢れていた



知らない街並み

知らない人々



見覚えの無いはずなのに




“私”は知らないはずなのに



「‥―――ぃ゙っ」


頭に刺すような鋭利な痛みと共に記憶や知識が溢れてくる

記憶の奔流に耐えきれなくなりその場に膝をつく

「アクス=サブリエル‥‥」


名前


この街であの女性に育てられた少女の名前



その記憶が私の中に在った


私と共に混在する存在



ならば


「いったい私は‥‥何なの‥‥?」





街の淀んだ視線の中

意識を闇に堕とした



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