Crimson Hearts

□Retrace:X
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「だからねっ
そんなモノ(剣)はしまってちゃんと事情を説明してほしいなぁ〜?」

ガシッとエコーの両肩を掴みびくびくと冷や汗を垂らしつつもオズは笑顔で訴えた


おや
あまりの微笑ましさに見失っていたが、まだ暗器をしまっていなかったようだ


ジャカッという効果音を付けて腕の一振りで刃を袖口へと収納した

「そうですね。
ギルバート様の恩人さんを傷つけたら、エコーがヴィンセント様に叱られますから。

ただのご友人だけならともかく。」


そう言いながら此方を見ないで欲しい‥‥

ただのご友人の私なら傷つけるくらいなら大丈夫ってわけか




「でも、この任務は貴方には関係のないことですので
これで失礼します。」


流石、貴族の使用人仕込みの礼儀正しいお辞儀をすると再びフィリップの追跡へと駆け出した



追い掛けたい


私の足はそう思うも、一歩も踏み出せないでいる




はっきりと告げられた“無関係”


その言葉に腑に落ちない何かを感じながら、納得するしかないのかと諦めが意志の選択を混乱させる




「って‥‥待ってよ―――!?」

オズの言葉に顔を上げると手を取られ、導かれるように‥‥共に、自然に駆け出した

あれほど動かなかった足は何もなかったかのように軽やかに地を蹴る



「そりゃあ‥‥さっき知り合ったばかりの子だけどさ‥‥
話をして‥‥
共感して‥‥
放っておけないと思ったんだ‥‥」

「‥‥‥‥。」





「無関心じゃなければ‥‥

それはもう無関係じゃないだろう!!?」





確かに少しのエゴも混じり得る論理ではある

だが

オズのその言葉に私の中で何かがカチリと音を立てて動いた


刻印の針ではない

何かもっと‥‥自分の中で大切に出来なかった何かが





「―――――。」




オズがすっと走る速度を落とす

下げていた視線をはっと上げると、背を向けたままエコーが足を止めていた




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