Crimson Hearts
□Retrace:T
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夏の太陽の元気もなくなる頃
室内にしては開放的な空間で私はボールを頭上にあるネットへとシュートを決めながら1人熱心に技術向上に励んでいた
ダム
ダム
床にボールを打ち付けながら上手く相手の手を掻い潜り走り抜けることをイメージしつつフェイントの動きを繰り返す
キュ、キュキュ
靴が床に擦れる音、ボールが弾む音に私の息づかいが夜に暮れてゆく体育館に響く
ガラララ‥‥
「璃縁ー?」
突如体育館の扉が開く
「璃縁、いるんだろ?」
ドリブルを止めその場に立ち止まり私の名を呼ぶ幼なじみの彼へと視線を向けた
ただ“親同士が仲がいいから”と昔からの馴染みを続けている
これをよくある腐れ縁と言うのか
「いるよ‥‥どうしたの?」
「俺、今部活終わったんだ!
途中までだけど一緒に帰ろうぜ?」
「‥‥わかった」
〔これで最後に‥‥〕
スリーポイントラインの外からボールを放る
ボールはネットへと放物線を描き
激しい音をあげながら輪の中心に入ること叶わず、床を虚しく跳ね動きを止めた
「惜しかったなぁ‥‥」
「待ってて、片付けて服着替えてくる」
「お‥‥おう」