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□騎士様のお仕事
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あー…なんや今日の楽屋の空気悪ー……。
ドアを開けて中に入ろうとした鈴村はゆっくり扉を閉めようとするが中から伸びてきた手にバシッと手首を掴まれる。
目の前には普段の三割増しほど眉間に皺を寄せた櫻井。
「何で閉めてるんだよ」
「怖いやんこの楽屋。大体お前何切れてるんや?」
「……切れてねーよ」
そんないつもより低い声で言われてもなぁ…。
中に入るとさらに酷かった。
真っ黒なオーラを出しながらにこにこと黒い笑みの潤々。無表情で足を組むよっちん。だいさくに至っては端っこで何かぶつぶつ言ってるし…!
こわっ!!
「ちょ!何があったん孝宏!!」←小声
「……………………なにも」
「その間何!?ホンマこれで何も無かった方が怖いわ!!」
がくがくと肩を揺すれば分かったと孝宏はゆっくり口を開いた。
「振られた…」
「…は?」
「今度水曜休みだろ俺たち?…だから何処か一緒に行くか?ってメールしたんだけど…ごめんなさいって…」
「え、?あ、あー…ご愁傷さま?」
「あいつらもダメだったみたいであんな調子」
まぁみんな何処かネジが一本取れとるなぁ確かに。
ん?てか、みんなの好き子って同じなん??
振られたって今メールで聞いたって…同職の子??
全く分からんわ。
というかマジ居づらい…。
「ちょ、ちょっと飲みもん買ってくるわ!」
財布を掴み逃げるように楽屋から走った俺。
うわ全員反応がないわ!
それもそれで寂しいんやけど…。
とぼとぼと自動販売機まで着くと可愛らしい俺の恋人が先客でいたようだ。
「しーもの?」
「あ、鈴村さんも喉乾いたんですか?」
えへへと可愛らしく微笑む下野に先ほどの恐怖など吹っ飛ぶ。
思いっきり抱きしめて再び栄養補給でもしとくわ!
あー…マイナスイオンや癒される……。
いきなり抱きつく鈴村に首をかしげる下野。
それでも彼の少し高い頭に手を伸ばしよしよしと撫でる。
「あの鈴村さん」
「ん?」
「こ、今週の水曜日休みなんですよね?何処か二人で出掛けませんか?」
僕も休みなので、
と柔らかく微笑んだ下野。
ああ、薄らと赤らんだ頬がめっちゃ可愛らしいわ…。
「ありがとな、そうやな二人で行こうな?」
ちゅっと頬にキスを落とす。
ん?ちょっと待て。
「でもなんで下野俺の休み知ってるん?」
「えっと櫻井さんに聞きました」
それって…うわアカン。嫌な予感が…
「電話で何処か行こうってやつか!?」
「え!何で知ってるんですか?」
あ、あいつ等!
俺が下野の彼氏って知っててやってんのか!!?
これからもあいつ等から目離したらアカンな…。
「これから頼むからあいつ等と二人っきりとかにはならんといてな…」
「あいつ等?」
主語が抜けている鈴村の言葉の意味が理解できず小さく首を傾げた。
う、かわいい!
「いや、やっぱええわ分からへんでも!」
天然で危なっかしい俺の愛しの子。
無理に分からないのなら分からなくてもええよ。
俺がずっと守るから
隣りで安心して笑っててな?
騎士様のお仕事
それは愛しの君を守る事