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□気づいた時には…
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“遊び”。そう思っていたのにいつの間にこの想いが変わっていったんだろう。







楽屋に向かう途中で曲がり角で人とぶつかる。
小柄な男の子は俺のよく知った彼。
顔を上げる前に彼を抱き上げ近くの使われていない倉庫に入った。




俺の顔を見て彼、下野紘の目が微かに揺らいだ。












「久しぶりだねぇ、下野?」
「た、谷山さ、」








恐怖に揺らぐその目はあの日からのもの。










「くくっ、どうしたの?…俺が怖い?」
「そ、んなわけ……!」
「ふーん……」









じろりと見つめればびくりと彼の体が強張る。
くすくす…ホント面白いよね下野は。

壁に下野を押しつける。
今からの事を察した下野は思いっきり顔を背ける。
が、谷山がそれを許さなかった。
強引に上を向かせ自分の唇を合わせた。










「ん!…ふ…ぁん…」








閉じきった口の中に舌をねじり込み絡める。
そして手が服の中に入った瞬間、頬に温かい何かを感じる。



目を開くと大粒の涙を流す下野。




驚いて唇を離した谷山をどんっと突き飛ばす。






「!」
「…や…」








「こん、な関係なんて、悲しいだけ、ですよ…もうこんな関係…やめ、ましょう…?」










無理に笑った様な表情、涙はとめどなく流れ落ちる。
ドアを開け走って出て行った下野。
谷山はきよく動けなかった。
何か大切なものを失った様な喪失感が襲う。

下野の言葉があんなに胸に刺さるとは…ね。
あーあ、自分がこんなに鈍いなんて…。








何でもっと早く気付けなかった…っクソ!







谷山も開いたドアから出て走った。







*******





倉庫を出て曲がった奥の方で声が聞こえる。
紛れもなく下野の声。








「こ、れでいいんだ…」
「良くないよ」
「!?」







俺の声を聞いてまた驚いた様な顔の下野。








「何がこれでいいの?」
「った、谷山さんには関係ないです!!」
「あるんだよ!」










声を上げる谷山。
一歩一歩とゆっくり近づいて頬に手を伸ばした。









「好きだよ」
「――え?」
「ずっとね、遊びだと思ってた。適当に遊べて…楽しければいいと思ってた…でも違う。





これは本気なんだ」








真剣な彼の表情には一切の嘘はない。
見開いた下野の瞳からは再び涙が流れる。







「ホントな、の…?僕も、谷山さんを好きなままで、いいの…」





子供の様に泣きだした下野を優しく抱きしめる。
こんなに想われていたのに俺は遊び何って言って…。
ホントにごめん。
もう一度強くぎゅっと抱きしめた。





遊びなんて言って自分はホントの恋というものを忘れていた
ごめん…
だけどもう離さない
やっと気づいた本気の想いだから…

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