小説4

□証が欲しいと喚かれたい午後
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「僕は誰のものにもならないよ」
 奴はある日の午後、布団の中でそう言って俺の腕から逃げた。
「慧のものにだってならない」
「別に欲しくねぇよ」
「だろうね」
 俺の強がりを見抜いているかのように奴は笑って、シャツを羽織る。下着を穿く。ズボンも穿く。まるで何事もなかったかのように。
「俺も、お前のものじゃない」
「知ってるよ。欲した覚えもないからね」
 くすり、とこぼれる笑いは悪魔の笑い。俺は目を逸らして、自分の下着を身につける。
 靴を引っ掛けた奴は、「じゃあね」と手を振って部屋を出た。本当に、何事もなかったかのように。
 好きじゃない。それは確かだ。なのに奴が俺を欲しない、俺を愛さない、俺を束縛しないのにひどく苛立つ自分がいる。
「馬鹿みたいだな、俺たち」
 呟いて、シャツを羽織る。さっきまで奴のくるまっていた布団からは、もう温もりが消えていた。



証が欲しいと喚かれたい午後






久々に銘治!びーえる!
お題は星食( http://xsize6.xria.biz/?guid=on) 様よりお借りしました

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