小説4

□内緒話
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「でも本当に、ゆーきの詩は綺麗だよ」
 不意に、真鶴がそう言った。
「柔らかくて、儚くて、優しくて、脆くて、硝子細工みたいな幻想郷だ」
「それは褒め言葉なのか?」
「そうだよ。白いワンピース着たお嬢様みたいな詩だよ、ゆーきの詩は」
 彼の言葉に、幽貴は困惑したような表情を浮かべる。それから、咳払いをして言った。
「……君の小説こそ」
「え?」
「君の小説こそ、綺麗だ」
「うそ、どこが」
「退廃的で、残酷で、でも美しくて、純粋で。君に実際に逢うまで僕は、無邪気で残酷な少女像をずっと思い浮かべていた」
「まさか」
「本当の話だ」
 直裁的に言われて、今度は真鶴が困惑する。言った幽貴も、複雑そうな表情で押し黙っている。
 空気を変えたのは、伸びてきた慧介の腕だった。二人の頭をわしゃわしゃと撫でた彼は、ニッと笑って言う。
「まあつまり、どっちの文章も正反対の方向に美しいってわけだ。天使と悪魔。そうだろ?」
「あー、そう言われたらしっくりくる。確かに僕の描く女性は悪魔的だ。慧の場合は死神だよね、女性がじゃなく君が」
「ん?」
「女性の心を破壊するって意味で」
「破壊なんてしないさ」
「してるよ、破壊」
 無自覚だと質が悪いよね、と真鶴に言われて、思わず幽貴も頷く。今度は慧介が不思議そうな顔をしながら、「俺の場合はただのジゴロだと思うけどな……」と首を傾げていた。




褒め合いっこというか何というか。みんなの作風のお話をしたかった。
そのうち個々の作品を実際に書いてみたい。
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