小説4

□内緒話
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「ゆーきの詩はキラキラしてるね」
 真鶴のことばに、幽貴は読んでいた刺繍から顔を上げた。
「何だいいきなり、気持ち悪いな」
「正直な感想だよ。キラキラしていて、描かれている女性はみんな美しい。ゆーきの精神世界が描かれてるんだなあって思う。若いなあ」
「幾らも違わないだろう」 
「若いよ、君は。二十歳だもの」
「お前も若ぇよ、お鶴」
 二人の会話に、割り込んでくる人物がいた。見れば喫茶に入ってきた慧介だった。真鶴は肩を竦めて応える。
「慧よりは、ね」
「人間五十年だからな。俺なんかもうすぐ折り返しだ」
「僕は五十年も生きられないだろうなあ」
「同感 」
 クスクスと真鶴と慧介が笑いあっていると、呆れた顔で幽貴が言う。
「二人は本当に仲が良いな」
「腐っても千切れない鎖で繋がってるからね」
「また、君たちの師匠が眉をひそめるようなことを」
「師匠には内緒だぜ、」
 なおもクスクス笑い続ける二人に、幽貴は呆れて声も出ない、とため息をつく。この二人の間にはどうやっても割り込めない。でも、それでもよいと思えてしまうのが、不思議だった。



幽貴くんは詩人です、二十歳。おかなのことが好きです。純粋。


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