小説4
□例えばさっきまで喘いでいた喉だとか
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精液も体液も何もかもぐちゃぐちゃになって俺の隣で寝ていた真鶴が、目を覚ました。
「……今何時」
「昼の2時」
「あーあ、真っ昼間から何てことしてるんだろうね、僕たちは」
「誘ったお前が悪い」
「それは君の勘違いだよ、慧」
ふわあ、と一つ欠伸をして、黒い髪をかきあげる真鶴。裸の上半身に散らばる鬱血が目の毒だ。まあ、俺の仕業だけど。
「銭湯行くか?」
問えば、鼻を鳴らして返された。
「この身体で?」
「悪いとは思ってるよ」
「毛ほども思ってないくせに」
床に散らかっていた襦袢を手にとって、真鶴がそれを身にまとう。なまっちろい身体が赤に覆われる。思わず喉が鳴った。
真鶴の身体は白い。どこもかしこも。それを赤が隠すのが何ともいやらしくて、噛みついてしまいたくなる。たとえば、さっきまで喘ぎ声を上げていた喉とかに。
枝のような手を引いて、自分の身体で受け止める。なに?と言いたげな真鶴に、俺はにやりと笑いかけた。
「欲情した」
「どこにその要素があったのさ」
「お前の身体」
「直接的だなあ」
ため息をついた真鶴が、いいよ、と身体を任せてくる。何だかんだでこいつは流されやすい。それを利用する俺も俺だけど。
「その襦袢女物だろ? いやらしいんだよ」
「江戸の粋人は赤い下着だよ」
「粋人ってより陰間だな、お前の場合」
「怒るよ?」
「怒れよ、そそる」
喉元に噛みつくと、ひゅうと真鶴の喉が鳴る。確かに喉仏が存在していることが余計に愛しくて、俺は、細い身体を煎餅布団の上に押し倒した。
まだ、まだまだ。翌朝まではたっぷり時間があるのだから。
ひっさびさにガチBL書きました。楽しい。