小説3

□宴会!
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 梁山泊には、一つのならわしがある。
 それは、新人が入ったら必ず宴会を開く、というものである。
 その日もその恒例に則り、梁山泊で宴会が開かれていた。
「んじゃ、かんぱーい!」
 頭領である晁蓋が音頭を取って、宴会はスタート。今日も酔うまで騒ぎまくる……という展開があるはずだった。
「王英、酌なら私がするぞ」
「ちょっと待て扈三娘、手に持っているそれは何だよ」
「媚薬だ」
「誰かちょっと助けてくれー!」
「はは、いつもどおりだね」
「宋江様って何気にドSだよな」
「そうかな?」
「そうですよ」
「林冲殿、一杯どうだ?」
「そうだな、もらおう」
 宴もたけなわになってきた頃。
 やっと仕事を終わらせて遅れてやって来た呉用が、宴会の様子を見てあっと声を上げた。
「どうした? 呉用先生」
 近くにいた劉唐に尋ねられた彼は、顔を上げて指を突き付ける。
「皆さん、肉ばかり食べすぎです! 野菜も食べなさい!」
 その発言に、場は騒然となった。
「えー」
「無理無理」
「俺たち殺し疲れてるもん。肉がなきゃな……」
「そうそう。俺たちは戦ってるもんな、先生と違って」
「肉―」
「肉肉―」
 騒ぎ出した一同を、呉用は声を張り上げて一喝する。
「肉がどれだけ高いか知ってるんですか!」
 場がシンと静かになった。
「この梁山泊には、かつて動物がいました。ところが今では、ここで捕るだけでは足りなくなり、買付に出る必要も出ています。肉は高いんです。分かりますか? 高いんです。そして梁山泊にはお金がないんです!」
 拳を握り、髪を振り乱して力説する呉用。鬼気迫る様子に、誰もが息を呑んだ。
 だが、中の誰かが、「でも……」と口を開く。
「野菜、美味しくないし……」
 次の瞬間。
 その彼の脇に、包丁が刺さった。
「……」
 一同が凝視していると、ふらりと現れた朱貴が目を吊り上げて言う。
「誰の料理が美味しくないって?」
 現れた彼にこっそり付けられている呼び名は、「食堂の鬼」である。
「文句がある奴はこっちへ来い、食べ物がどれだけ大事か分からせてやる……」
 パキパキと指の関節を鳴らしながら、ただでさえ厳つい顔を歪める朱貴。
 一同は頭を下げ、声をそろえて言った。
「野菜も食べさせていただきます」







朱貴は台所の鬼。

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