小説3

□恐怖の軍師とエロ軍師
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※イク様の「イク」の字が携帯だと表示されないので、ちゃんと見たい方はパソコンからどうぞ。
※かなりがっつりBL。やや性的。注意。
※郭嘉が変態です^^






「郭嘉殿」
 そう言って微笑んだイク様の目が笑っていないように見えたのは、俺だけじゃなかったはずだ。
「少し一緒に来ていただけますか?」
「……はい」



 招かれたのは、イク様の私室。そこにプライベートっぽさは欠片もない。中心の机の上にはたくさんの書類の山。そして、あまり見たくはないんだけど、壁に並ぶ数々の拷問器具。
「……あの、イク様」
「私が言いたいことが何か分かっていらっしゃいますよね、郭嘉殿?」
 音にすればニコッとか、そういう音がしそうな表情だった。ただし、イク様が掴んだ机の角はミシッと音を立てている。そのギャップが怖い。「荀ケ様ってお美しいわよねー」とか言ってる女官に見せてやりたいくらいだ。
「……えっと、その……」
 ヤバい、何か言わなきゃならないのは分かってる。でも、心当たりがあり過ぎて困る。どれだろう。俺が女官に手を出すのはいつものことだとして、それ以外だとすると……。
「私は、貴方にはもう少し分別があると思っていました」
「……すいません」
「手を出してもよい方とよくない方と、見分けぐらいはつかないのですか?」
 優雅に開かれた扇子が、イク様の口元を隠す。
「それとも、わざとですか?」
 心当たりは、あった。
 数日前に手を出した、そこそこ高い地位にいる女官だ。確か、曹操様にも気に入られていて、身の回りの世話を仰せつかっていたと思う。そこには別に、曹操様の妾にするとか、そういう意図はないはずだ。あんなにイケメンなのに、曹操様は初心だから。でも、それはあくまで内実の話。女官は全員が曹操様のものだ。たとえ下っ端とはいえ、本来俺が手を出していい相手じゃない。それが許されているのは俺が有能だからで、だからきっと今回も曹操様は許してくれると思うけれど、イク様が言っているのは、そういうことではないはずだった。
「曹操様が何とおっしゃるかは別として、国には規律が必要です。貴方が今回したことは、それを破ることに他なりません」
 射るような視線に、ぞくりと視線が震える。生唾を飲み込んで、「……で」と俺は挑発的にイク様を見遣った。
「どーなるんスか、俺は」
 今回は、一体どうなってしまうんだろうか。イク様は文字通りのドSだから、規律を破ると恐怖のお仕置きが待っている。典韋や許楮みたいな女性陣には一応手加減しているみたいだけど、俺にはそれは一切なし。何やら楽しそうに拷問器具を眺めるイク様を見ていると、何とも言えない気持ちになる。
「踏んでくれますか? 足舐めましょうか? それとも放置プレイ?」
 俺は別にマゾじゃない。マゾになるのはイク様相手限定だ。でも、だからこそ、こんなに明け透けに物が言える。
「なあ、イク様」
 身を乗り出して扇子を退けようとすると、「身の程を知りなさい」と逆に頬を叩かれた。
「触らないでくださいますか、郭嘉殿」
 ああ、これこそ俺が求めていたもの。思わず笑みがこぼれると、気持ち悪い物を見遣る視線でイク様がこちらを見る。
「貴方、そんなに変態だったんですか」
「否定はしねーな」
 だって、イク様のお仕置きのために、こんなに頑張って規律を乱しているんだから。変態なのは否定しない。
「でも、俺をこんなにしたのはあんただ」
 イク様から与えられる苦痛だから、耐えられる。お忙しくてストレスも溜まりまくってるイク様にとって、云わば俺はサンドバック。分かっちゃいるけど、その立場を誰か他人に渡す気はない。
「イク様」
 欲に掠れた声で囁いて、イク様の頬に手を添える。相変わらず扇子が邪魔だ。眼鏡も。眼鏡の弦に手を伸ばしかけたところで、「郭嘉殿」と手を振り払われた。
「曹操様からのご指示です。これから一か月、北の征伐に向かいなさい」
「ええ!?」
「それが今回の貴方への罰です。私からではありませんよ? 曹操様からです」
 逆らえない命令に、それはないよと肩を落とす。これは、俺が期待していたのより何倍もひどい。一番近いのは、放置プレイってとこだろうか。
「……今すぐ?」
「はい」
「一刻後とかは?」
「準備の時間がいるでしょうから、それくらいなら……」
「準備じゃなくてさ」
「はい?」
 すっかり余裕の表情をするイク様から、さっと扇子を叩き落とした。同じ軍師でも、俺の方が体力は上だ。暴れようとした手首を掴んで、そのまま椅子の後ろに縛り付ける。
「あと一刻、イク様からのお仕置き希望」
「なっ……」
「ちなみに内容は俺が決めるから」
 自分の髪紐でイク様の手首を縛ってしまい、抵抗を閉じ込める。それでもがたがたと揺れる椅子が鬱陶しくて、そっと足元にしゃがみ込んだ。
「大丈夫ですよー、舐めるだけだから」
 きっちり履かれた黒い靴を脱がせて、現れた素肌に舌を這わす。これくらいなら朝飯前だ。前に「屈辱を与える方法」としてやらされたことがあったけど、あのときも全然苦痛じゃなかった。
「俺が放置プレイされるんだから、イク様も一緒にどうぞ」
「この変態……っ」
「ドSに言われるのは心外ッスね。愛情の裏返しのくせに」
 イク様がこんなに厳しいのは、俺に対してだけ。それに気付かない俺じゃない。ついでに言えば、俺はただのマゾじゃないのだ。立派にサドの適性も兼ね備えている。要は使い分けているだけだ。
「イク様、」
 足の甲に口付けて、上目遣いに相手を見遣る。紅潮した顔でこちらを見下ろしていたイク様は、綺麗な脚で思いっきり俺の頬を蹴り飛ばした。
「この、エロ軍師!」
 その言葉だって、イク様からなら全然嫌じゃない。








本当にごめんなさい! でも3巻読んでやらなきゃと思ったんです!

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