小説3

□弐
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「呂蒙、少し話があるのですがいいですか?」
 美しい顔立ちの上司に突然そう話を持ちかけられ、呂蒙は首を傾げながら彼について行った。
「周瑜殿、話というのは……」
 招かれた周瑜の屋敷。呂蒙は緊張して上司の顔を見る。
「まさか、何処かの豪族に動きがあったんですか?」
 周瑜の顔は、いつもよりも硬い。そこから悪い可能性を考えて呂蒙が問うと、「いいえ」と周瑜は首を横に振った。
「実は、皆に知らせようと思っていることがあるのですが……。まずは呂蒙に知らせようと思いまして」
「はあ……」
「実は、結婚しようと思っているのです」
「はあ!?」
 突然斜め上に飛んだ話に、呂蒙は声を裏返らせた。
「結婚って……でも、周瑜殿には小喬殿がいらっしゃるではありませんか!」
「小喬も相手方も、それは承知のことです。それに、今回は……」
 声を潜めて、周瑜は密やかに言った。
「私がもらわれる側ですから」
「は? あの……」
 周瑜の言っていることの意味が分からず、目を白黒させる呂蒙。そんな彼を見ながら、周瑜は覚悟を決めた顔で言った。
「私が言うことに、驚かないでくださいね」
「はい……」
「私の結婚相手というのは、伯符様なのです」
「はあ……。ってええええええええええ!!!!????」
 驚きのあまり、呂蒙はがたん、と椅子を蹴って立ち上がった。
「周瑜殿、冗談はやめてくだ……」
 思わず声を荒げた呂蒙だったが、周瑜の真面目な顔に気付いて、はっと口を噤む。そして、ごほんと咳払いして席に着いた。
「……周瑜殿、まさか本気ですか?」
「本気です」
「俺たちを担ごうとしているってわけじゃないですよね?」
「伯符様の威信にかかわるような冗談、伯符様が許しても私が許しません」
「……ですよね」
 じゃあ、と呂蒙は周瑜の顔を見た。
「本気の話なんですね」
「存外驚きませんね」
「最初は驚きましたけど、何と言うか……思い当たる節が多すぎて……」
「そうですか。これでも隠しているつもりだったんですけどね」
 そう言って、ふふ、と周瑜は微笑んだ。
「隠し事はできませんね」
 その顔は魅力的で、まさに「美周郎」そのもの。もらわれる側と言われても驚けない彼の様子に、呂蒙はすとん、と心が落ち着くのを感じた。
「……周瑜殿」
「はい?」
「その……幸せに、なってくださいね」
 照れながら呂蒙がそう口にすると、周瑜は一瞬キョトンとした顔をして、それから、にっこりと柔らかく微笑んだ。
「ええ、勿論」







続いてしまった^^

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