小説2

□スウィートマイア
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 いつからだろうか。あの男を好きになってしまったのは。
 前から、日照会の仲間たちから噂だけは聞いていた。女を喰い漁る、典型的な女の敵のような男。それなのに歌はつい引き込まれてしまう何かを持っている。私の頭には、前半だけが記憶されていた。
 初めて会ったのは、いつだったろう。
 嘘だ。忘れるわけがない。カッフェー「浪漫」で、おかなと話しているところに遭遇したのだ。向こうは花巻も一緒で、私は独りだった。
 あの佐々慧助だと聞いて、当然ながら警戒した。それなのに、二度、三度と会ううちに、いつの間にか引き込まれていたのだ。この、私が。
 会う度に、佐々の悪行の噂が頭を過ぎった。問いただしても佐々は否定しなかったし、花巻に至ってはハッキリと肯定していた。その、罪悪感の微塵も感じられない態度は私の感情を逆撫でした。それでも怒鳴らずにいられたのは、日頃の努力の成果だろう。
 それなのに。
 それなのに、いつの間にか、好きになってしまっていた。
 ああ、この感情は泥沼だ。私の体にまとわりついて、どんどんと引きずり込んでいく。それが不快なはずなのに、一方で、心地良いと感じている自分もいて。まるで、チョコレートの沼なのだ。
 ああ、
 ああ、
 私は、どうすれば、いい?
 どうすれば、この甘い泥沼から抜けられる?
 教えてくれ!だれか、私に!



甘い泥沼






タイトルを見て、言菜ちゃんだなーと思ったので、言菜ちゃんのお話。
お題は言葬様からお借りしました。

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