その他の人々編

□揺らぎの音楽
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==序章==

 


 やわらかな風が吹くときに彼は来る。
 長い旅の疲れをしばし休めるかのように。
 実際、気が遠くなるほど長い果ての見えない旅をしているのだ、彼は。
 多くの悲願を、願いを背負い、歩いている。
 わたしの大事な人たちの夢もまた、彼は背負っているのだ。
 大きく、道も無く、濃霧のような視界の効かない茨道。
 仇であるはずだ、わたしたちは。
 互いに痛みを背負っている。
 ・・・・・・でも、選び取った。
 傷の絶えない、背を守る相手すら居ない、その道程を、その腕で掻き分け、踏みしめ、道無き道に、道を作る。

 以前たった一人で訪れた時に土産だと手渡されたのは、簡素な作りの楽器だった。
 楽器を掻き鳴らすような暇も余裕も無かった以前の生き様では、意味も無いもののように思えたが、今はただ・・・彼が迷わぬようにここへ辿りつく様に。
 嘗て傍らで笑っていた家族のように愛しい二人が穏やかに眠るように、拙いながらもその楽器を嗜むようになった。
 澄んだ音色が、寒々しい雨隠れの里へ染み渡る。
 彼が、彼の抱える至高の道程を受け入れられないがために、追われることとなったとしても、わたしは・・・我が里は、アナタと共にある。

 居場所はここに。

 アナタの願いを共に夢見る同志はちゃんといる。
 忘れないで・・・
 わたしたちはアナタと一緒にその道を歩くのだから。
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