イタナルコ編

□「あ」から始まる30題
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F


 思い出の中に存在するきみの空気は、常に夕焼けの中にある。
 一人でブランコを漕いでいて、寂しそうな眼差しで遠くを見つめ、楽しむのではなく・・・惰性のように揺らしている。
 目を放した隙に居なくなる。
 家に帰ったのかと思ったらそうではなかった。
 ふと、気がつく。
 この公園には迎えに来る家族が多い。
そして、きみは自分にはそれが無いことを思い知らされて耐えられなくなるのだ。
 だから・・・俺は時々日の落ちた公園へ足を運ぶ。
 揺らしていたブランコの前に立ち、手を差し伸べた。
「帰ろう、ナルトちゃん」
「・・・・・・お兄ちゃん、だれだってば?」
「誰だと、思う?」
 問いかけられて、逆に聞き返すと、困った様子で眉間に皺を寄せた。
 俺は小さく笑って、僅かに屈むと目線を合わせた。
「誰でもいいんだよ、今このとき、この場所では、ナルトちゃんのお兄ちゃんだ」
「・・・・・・ここでの、お兄ちゃん?」
 恐る恐るとした確認に、俺はゆったりと笑って見せる。
「ね、だから帰ろう。それとも見知らぬ人には着いていってはいけません、という言葉通り、一緒に手を握ってくれないのかな?」
 きみは目を大きく見開いて、次にはにかむ様に笑った。
 白くて華奢な手が俺の差し出した手を取った。


        **********

「帰ろう、イタチ」
 泣き笑いの表情で力の抜けた身体を背負い、ナルトは地面を踏みしめ、歩き出す。
青白い顔色のその青年は永久に返す言葉を紡ぐことはない。
代わりに傍らを、彼の弟がその弟に味方した三名と共に歩いていた。
「今、この時、この場所では、あたしはイタチのお姉ちゃんだってば」
 ナルトのいいように、青年の弟であり親友は、怪訝に思ったらしい。
そりゃそうだろう。根拠が判らないからだ。
「・・・・・・ナルト?」
 体格差はかなりあるものの、それでも難なく背負えるほど、忍としては成長していた。
「ん。遠い昔にしてもらったこと。だから、決めていた。闇に迷えば迎えに行こうと。今度はあたしがお姉ちゃんになるんだってば、そうして連れて帰るんだってばよ? お前と、イタチをな」
 全ての始まりはいつも茜色に染まる。差し伸べた手も受け止めた手も、それは白い光。






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彼岸の人:暁イタチ
抜け忍:サスケ&鷹班
木の葉の忍:仙人ナルコ
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