イタナルコ編
□黄昏より深く
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序
光の中に闇を見つける。
闇の中に光を見いだす。
少女の血筋は、そういう目を持っていた。
特殊な能力は持たないが、しかし古い古い原始の能力で、本来誰もが持っていた物だ。が、現実を見据え成長する内に本来備わったそれらは忘れられ…消えていく。
少女の「見通す」その能力は、色素の薄い虹彩も相まってことさら強く、今は行方知れずの両親曰く先祖返りと言われている。
精霊や妖魔を見いだし、言葉を交わす。
親しき隣人として認め、時には力を借りる事が出来た交渉術は、本来ならばその手の業種に着けば有利に事が運ぶだろうそれも、残念ながら本人事態も、彼女の守護を司るモノも望んでいなかった。
出会いは彼女が片手ほどの年の頃。
両親とはぐれて暫くしてのことだ。乗り込んでいた旅客船が嵐に合って沈没し、たった一人生き延びた。
幸か不幸か、寂れた漁村に流れ着き、そこで拾い上げた老夫婦にて育てられたからだ。
身振り手振りで様々な事を習い、両手の数ほどの人数ですべてのその村は、年老いた者たちで構成されていて、若い者はほとんどすべて戦に連れ去られ…滅びを待つだけだったという。
金の髪に青い瞳。異国人である事が如実な少女であったが、子供のいなかったその村人達は、自身の子供でもあるかのように少女を可愛がった。